2008-01-01から1年間の記事一覧

天文年間 2005年度版 誠文堂新光社

8月の空のページに七夕の七月七日と上弦の月との関連が指摘されています。上弦の月は上半分が黒で下半分が白のかささぎの特徴と一致します。旧暦七月七日の天の川を横切って飛翔するかささぎとは、月の化身のことだったのです。 「かささぎですねえ。頭の後…

俵万智 りんごの涙 文芸春秋 1989年11月

「りんごの涙」という題名にひかれて購入したのですが、偶然、あの有名なサラダ記念日の七月六日というのが、旧暦の七月六日だったことを知りました。あわせて、“文月の六日”が“七月六日”なのだということも知りました。 ちょうど、「銀河鉄道の夜」の“かさ…

織田正吉 絢爛たる暗号 百人一首の謎を解く 集英社文庫 1986年12月

この文庫本を手にとったのは、和歌とかささぎの橋への興味からです。しかし、読み進むにつれて、和歌というのは、ありとあらゆる言語技法を駆使した言葉の芸術なのだということがわかってきました。織田氏が、百人一首という作品を縦横にさまざまな技法のフ…

牧野立雄 隠された恋 れんが書房新社 1990年6月

コスモスの君と呼ばれたひとがいたそうです。ただ一度だけ、としを見舞った日本女子大でのとしの後輩。そのひとを見いだしたのが牧野氏です。口絵にそのひとの写真も載っています。 大正十一年七月に下根子桜に移されたとしの元まで、賢治が豊沢町からそのひ…

小沢俊郎「アルビヨンの夢と修羅の渚」四次元61年4月

同じく「川しろじろとまじはりて」国文学75年4月 (所収 小沢俊郎「宮沢賢治論集3」有精堂1987年8月) イギリス海岸は、作品「イギリス海岸」の化石発掘のエピソードを通してプリオシン海岸との関連をもちます。しかし、一方で、イギリス海岸は“修羅のなぎ…

照井謹二郎 追憶ふくろふ 1946年

初出 『農民芸術』第一輯 1946年5月 所収 宮澤賢治研究資料集成 第2巻 「二十六夜」誕生エピソードのもうひとつです。このエピソードを見つけたのは最近です。二枚貝説もほぼまとまって、「二十六夜」の成立時期をより裏づけるための資料が、先の資料の他に…

照井謹二郎 童話「二十六夜」が創られるまでに

所収:照井謹二郎「宮澤賢治先生にちなんで」花巻賢治子供の会 1998年5月 クラムボン=二枚貝としたとき、「やまなし」が「二十六夜」をデフォルメしたような話であるということに気が付きましたが、その頃、二つの作品のどちらが先に成立したのかが判然とし…

入沢康夫 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の原稿のすべて 宮沢賢治記念館 1997年3月

この本は「銀河鉄道の夜」の全生原稿をカラー写真で製版したものです。原稿裏になんらかの記載がある原稿の写真も掲載されています。「銀河鉄道の夜」により深く踏み込みたいと考えている賢治フリークには必携の一冊です。値段もべらぼうではありません。わ…

石森延男 「麦三合」の思い出 1958年7月

初出 「宮沢賢治全集」月報第一号、昭和33年7月 筑摩書房 所収 宮沢賢治研究資料集成 第十二巻 誤謬と主張して字句を直すのとちょうど反対の行いをしてしまった方がいます。「雨ニモマケズ」の“一日ニ玄米四合ト”を“一日ニ玄米三合ト”に修正し中学教科書に載…

嵐山光三郎「古本買い 十八番勝負」集英社新書2005年6月

この本は99.8%宮澤賢治フリークには無関係な本です。しかし、p143の左半分のみは読むに値すると思います。その部分とは嵐山氏が小倉豊文『宮沢賢治「雨ニモマケズ手帳」研究』を拾い読みした部分で、次のように記しています。 私は、ヒドリは東北地方でいう…

雑誌Newton 2008年12月

巻末の星空の不思議Q&Aというコーナーに、二十六夜がらみで「三体月」という伝承が紹介されています。月の模様が三体の祭神に見えるとか、一種の蜃気楼現象だとか。 ただ、なにしろ富山の蜃気楼よりもめずらしい現象なので目撃者も少なく、 科学的分析に耐…

三と十の暗合 目次

三と十の暗合 目次 三と十の暗合 千と千尋の神隠し 「千と千尋の神隠し」の中の宮澤賢治作品 カオナシ考 ハウルの動く城 崖の上のポニョ 宮崎駿 「風立ちぬ」 トウモコロシとオチャマタクシ

崖の上のポニョ

人魚から人間になった燈台守の話 理砂「今、この家は嵐の中の燈台なの。 真っ暗な中にいる人は、 みんなこの光に励まされているわ。」 ポニョが起こした嵐の中、家にたどり着いた理砂が緊急用電燈をポニョに託します。ポニョはそれを頭にのせる。まるで燈台…

ハウルの動く城

南十字が心臓を取り戻すという話。史上もっともロマンチックな宮崎駿作品 荒地の魔女のメッセージ 「汝、流れ星を捕らえし者、心なき男、お前の心臓は私のものだ」 心臓を失ったことで、魔力を得、魔力を使うことで、だんだんと人間を失ってゆくハウル。ハウ…

カオナシ考

カオナシの正体は、・・・もちろん、不明です。 しかし、カオナシが作品中で、どんな存在だったのか解きほぐすことができるように思います。すなわち、カオナシとハクには多くの類似点があります。 (1) どこか他所からやってきた存在であること。 ハク 油屋…

「千と千尋の神隠し」の中の宮澤賢治作品

「千と千尋の神隠し」の大きな特徴として、「銀河鉄道の夜」、「双子の星」、「どんぐりと山猫」のイメージやらエピソードやらモチーフやらが引用されて盛り込まれています。非常に宮澤賢治を強く感じる作品になっています。それぞれを検討してみます。 1.…

千と千尋の神隠し

呼び出され試される物語(優等生などんぐりと山猫) 龍の薬のふたつの効能 最初に飲んだときは、体の中にため込んだものがすべて排出されます。ハクは苦団子を飲まされて魔女の契約印と虫を吐き出しました、カオナシは食べたものをすべて吐き出しました。千…

三と十の暗合

※以下は、二枚貝説の知識を前提としています。 劇場用宮崎駿作品は、ある基準を用いると前期5作品と後期5作品に分けられます。その基準とは、ヒロインもしくはヒーローが魔法を掛けられているか呪われている、という点です。 具体的には、ポルコは豚になる…

二枚貝説 目次

「やまなし」 クラムボンとは クラム・ボン=二枚貝の坊や ドラマ「二十六夜待ち」 作品「二十六夜」を精読した理由 「やまなし」、イサドとは イサド=西方浄土(サイドのアナグラム) 羅須地人協会 羅須=修羅の真逆のアナグラム 作品群としての「やまなし…

「やまなし」 祈りの姿

銀河鉄道の夜と二十六夜では、それぞれカンパネルラと穂吉というように、死者は固有名詞をもっています。ところが、やまなしでは一般名詞である“やまなし”です。 なぜ、一般名詞なのでしょうか。来迎の対象になる者は特定の誰かではないのでしょうか。「やま…

螺蛤とは

ところで、賢治は螺蛤という着想をどこから得たのでしょう。 大正11年の1学期、ある生徒が、獅子鼻のフクロウと、子フクロウをタニシを餌として飼っている人の話を賢治に話し、夏休みに突然訪ねてきた賢治の依頼でフクロウのいる獅子鼻に案内したというエ…

「銀河鉄道の夜」成立時期について(再考)

「 イギリス 海岸」 には 一 九 二三、 八、 九 の 日付 が 振ら れ て い ます。 この 日付 は 1923 年 7 月 31 日 ~ 8 月 12 日 の 北海道・樺太 旅行 中 で あっ た こと と、 作品 内容 により 前年 の 誤り、 あるいは 賢 治 自身 が 日付 を 疑っ た …

カムパネルラはどこに転生したのか

わたしは、カムパネルラは南十字で降りたのではなく、転生していったと解釈しています。では、カムパネルラはどこに転生していったのでしょうか。ヒントは第四次稿にありました。 ひとつは、ラストでカムパネルラの父親が、もう四十五分たったから駄目だと言…

逆さ十字の天使

苹果とは命であると解けたものの、ずっと、鳥が何を意味しているのかわからない日々がつづきました。あれこれ思い悩んでいたわたしが、鳥も命である、という答えを見つけだすきっかけとなったのが「ローゼンメイデン」というアニメです。 あらすじ:人形師ロ…

オホーツク挽歌

詩「オホーツク挽歌」の中でも“(十一時十五分”からはじまる12行がとくに難解です。この部分の解釈を難しくしているのが8行目の“HELLと書きそれをLOVEとなほし”です。そこで、8行目を抜いて読んでみます。すると、読解上の難しいことはなにもなくて、賢治の…

琴の星

「銀河鉄道の夜」で琴の星が蕈(きのこ)のように足をのばす場面が都合2箇所あります。第一次稿と第二次稿は欠落部分に相当しますが、牛乳を入手できなかったジョバンニが天気輪の丘から琴の星を望む場面、と、第四次稿では消えますが第一次、二次、三次と…

7月7日は乗車記念日

星座早見で、白鳥座に天頂を合わせ、午後11時の日付のところを読むと八月十四日になります。これが、銀河鉄道が飛んだと思われる日付です。しかし、「銀河鉄道の夜」にはもうひとつの日付が隠されています。 「まあ、あの烏。」カムパネルラのとなりのかほ…

賢治はベジタリアンだったのか

賢治はベジタリアンである。そういうイメージが固定していると思います。しかし、人間、生まれながらのベジタリアンなどいない訳ですから、賢治にかぎらず菜食生活には始まりと、人によっては終わりがあるはずです。 大正7年4月10日(水) この頃から菜食生…

鳥とは

苹果とは命である。であれば、苹果と鳥は、いったい何が違うのでしょうか。 かほるたちが苹果をお菓子のように食べます。おなじようにジョバンニ達が食べたお菓子は鳥捕りがくれた鳥です。青年がジョバンニ達にも苹果をくれますが、ふたりは食べずにポケット…

苹果とは

苹果とは何でしょう。賢治は林檎と苹果を区別して使っていたようですが、そのメタファにはながらく到達できませんでした。ジョバンニの切符の分析から、ジョバンニの切符=ジョバンニの命(心臓)と解するのがもっとも妥当と考えていました。そして、最終的…