2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

三と十の暗合 目次

三と十の暗合 目次 三と十の暗合 千と千尋の神隠し 「千と千尋の神隠し」の中の宮澤賢治作品 カオナシ考 ハウルの動く城 崖の上のポニョ 宮崎駿 「風立ちぬ」 トウモコロシとオチャマタクシ

崖の上のポニョ

人魚から人間になった燈台守の話 理砂「今、この家は嵐の中の燈台なの。 真っ暗な中にいる人は、 みんなこの光に励まされているわ。」 ポニョが起こした嵐の中、家にたどり着いた理砂が緊急用電燈をポニョに託します。ポニョはそれを頭にのせる。まるで燈台…

ハウルの動く城

南十字が心臓を取り戻すという話。史上もっともロマンチックな宮崎駿作品 荒地の魔女のメッセージ 「汝、流れ星を捕らえし者、心なき男、お前の心臓は私のものだ」 心臓を失ったことで、魔力を得、魔力を使うことで、だんだんと人間を失ってゆくハウル。ハウ…

カオナシ考

カオナシの正体は、・・・もちろん、不明です。 しかし、カオナシが作品中で、どんな存在だったのか解きほぐすことができるように思います。すなわち、カオナシとハクには多くの類似点があります。 (1) どこか他所からやってきた存在であること。 ハク 油屋…

「千と千尋の神隠し」の中の宮澤賢治作品

「千と千尋の神隠し」の大きな特徴として、「銀河鉄道の夜」、「双子の星」、「どんぐりと山猫」のイメージやらエピソードやらモチーフやらが引用されて盛り込まれています。非常に宮澤賢治を強く感じる作品になっています。それぞれを検討してみます。 1.…

千と千尋の神隠し

呼び出され試される物語(優等生などんぐりと山猫) 龍の薬のふたつの効能 最初に飲んだときは、体の中にため込んだものがすべて排出されます。ハクは苦団子を飲まされて魔女の契約印と虫を吐き出しました、カオナシは食べたものをすべて吐き出しました。千…

三と十の暗合

※以下は、二枚貝説の知識を前提としています。 劇場用宮崎駿作品は、ある基準を用いると前期5作品と後期5作品に分けられます。その基準とは、ヒロインもしくはヒーローが魔法を掛けられているか呪われている、という点です。 具体的には、ポルコは豚になる…

二枚貝説 目次

「やまなし」 クラムボンとは クラム・ボン=二枚貝の坊や ドラマ「二十六夜待ち」 作品「二十六夜」を精読した理由 「やまなし」、イサドとは イサド=西方浄土(サイドのアナグラム) 羅須地人協会 羅須=修羅の真逆のアナグラム 作品群としての「やまなし…

「やまなし」 祈りの姿

銀河鉄道の夜と二十六夜では、それぞれカンパネルラと穂吉というように、死者は固有名詞をもっています。ところが、やまなしでは一般名詞である“やまなし”です。 なぜ、一般名詞なのでしょうか。来迎の対象になる者は特定の誰かではないのでしょうか。「やま…

螺蛤とは

ところで、賢治は螺蛤という着想をどこから得たのでしょう。 大正11年の1学期、ある生徒が、獅子鼻のフクロウと、子フクロウをタニシを餌として飼っている人の話を賢治に話し、夏休みに突然訪ねてきた賢治の依頼でフクロウのいる獅子鼻に案内したというエ…

「銀河鉄道の夜」成立時期について(再考)

「 イギリス 海岸」 には 一 九 二三、 八、 九 の 日付 が 振ら れ て い ます。 この 日付 は 1923 年 7 月 31 日 ~ 8 月 12 日 の 北海道・樺太 旅行 中 で あっ た こと と、 作品 内容 により 前年 の 誤り、 あるいは 賢 治 自身 が 日付 を 疑っ た …

カムパネルラはどこに転生したのか

わたしは、カムパネルラは南十字で降りたのではなく、転生していったと解釈しています。では、カムパネルラはどこに転生していったのでしょうか。ヒントは第四次稿にありました。 ひとつは、ラストでカムパネルラの父親が、もう四十五分たったから駄目だと言…

逆さ十字の天使

苹果とは命であると解けたものの、ずっと、鳥が何を意味しているのかわからない日々がつづきました。あれこれ思い悩んでいたわたしが、鳥も命である、という答えを見つけだすきっかけとなったのが「ローゼンメイデン」というアニメです。 あらすじ:人形師ロ…

オホーツク挽歌

詩「オホーツク挽歌」の中でも“(十一時十五分”からはじまる12行がとくに難解です。この部分の解釈を難しくしているのが8行目の“HELLと書きそれをLOVEとなほし”です。そこで、8行目を抜いて読んでみます。すると、読解上の難しいことはなにもなくて、賢治の…

琴の星

「銀河鉄道の夜」で琴の星が蕈(きのこ)のように足をのばす場面が都合2箇所あります。第一次稿と第二次稿は欠落部分に相当しますが、牛乳を入手できなかったジョバンニが天気輪の丘から琴の星を望む場面、と、第四次稿では消えますが第一次、二次、三次と…

7月7日は乗車記念日

星座早見で、白鳥座に天頂を合わせ、午後11時の日付のところを読むと八月十四日になります。これが、銀河鉄道が飛んだと思われる日付です。しかし、「銀河鉄道の夜」にはもうひとつの日付が隠されています。 「まあ、あの烏。」カムパネルラのとなりのかほ…

賢治はベジタリアンだったのか

賢治はベジタリアンである。そういうイメージが固定していると思います。しかし、人間、生まれながらのベジタリアンなどいない訳ですから、賢治にかぎらず菜食生活には始まりと、人によっては終わりがあるはずです。 大正7年4月10日(水) この頃から菜食生…

鳥とは

苹果とは命である。であれば、苹果と鳥は、いったい何が違うのでしょうか。 かほるたちが苹果をお菓子のように食べます。おなじようにジョバンニ達が食べたお菓子は鳥捕りがくれた鳥です。青年がジョバンニ達にも苹果をくれますが、ふたりは食べずにポケット…

苹果とは

苹果とは何でしょう。賢治は林檎と苹果を区別して使っていたようですが、そのメタファにはながらく到達できませんでした。ジョバンニの切符の分析から、ジョバンニの切符=ジョバンニの命(心臓)と解するのがもっとも妥当と考えていました。そして、最終的…

Cor Christ という知識

ところで、いったいぜんたい賢治はどこから南十字と"Cor Christ"の知識を得たのでしょうか。 賢治自身も聖書を読んでいたという清六氏の証言があります。また、真っ先に思いつくのは、キリスト教信者であり賢治の友人でもあった斉藤宗次郎氏の存在です。しか…

ジョバンニの切符

ジョバンニの切符とはなんでしょうか。森・堀尾「曼荼羅」説、入沢・天沢「マラルメの「音楽と文芸」」説、西田良子「妙法蓮華経」説、など多々あります。ただ、わたしはちょっと違った見方を持っています。 ジョバンニの切符を見終えた車掌はジョバンニに南…

賢治はいつジョバンニに恋をさせたのか

かほるが第0次稿から存在していたと仮定します。すでにジョバンニとの関係も第1次稿のように描かれていて、としがそれを読んでいたとするならば、としにとって、かほるという存在はどのように映ったでしょうか。 かほる:物語の中でジョバンニが恋情を抱く…

ジョバンニの恋

第1次稿から第4次稿まで、かほるに関し、一貫して変わらない記述があります。 美しく頬をかがやかせて 「・・・ まあ、きれいなそら」 わたしは、この部分は、単なる形容であるとするよりも、抒情と解すべきと考えます。 森鴎外は作品「大塩平八郎」の叙事に…

「銀河鉄道の夜」の成立時期

「銀河鉄道の夜」の第1次稿の構成は独特です。前半がなく後半のみです。なぜ、前半が断片すらないのでしょうか。「銀河鉄道の夜」は、第1次稿から第4次稿まで現存しており、第2次稿以降は、それ以前の原稿の書き直し分、差し替え分とされています。なら…

「二十六夜」と「やまなし」の成立時期について

「二十六夜」の成立時期 作品「二十六夜」については、照井謹二郎氏の獅子鼻のフクロウのエピソードと、夏休み中の二十六夜が大正11年8月18日(金)が旧暦6月26日であったことから、大正11年8月下旬としてよいと思われます。 農場実習が終わった後で、小…

鳥捕りとジョバンニ父のアナロジー

チョコレートよりもおいしいお菓子を差し出す鳥捕り。銀河鉄道は、イギリスとタイタニック沈没位置の中間を飛行中です。ちょうどアイスランド上空にさしかかるあたりです。 鳥捕りの押し葉は、ジョバンニたちの食感では、ぽくぽくと固めた雪を食べているかの…

祈りの姿

しかし、そもそも銀河鉄道が来迎列車ならば、単純に西に向かいさえすればいいものを、なぜ南下するのでしょうか。その上、最初に北上までしています。北上することに何か意味があるのだろうか、という疑問が生じます。じつは、この疑問こそが、作品「銀河鉄…

銀河ステーションはどこ

銀河鉄道は西進していた、という解釈は、竹内・原田「宮沢賢治・時空の旅人」の「天気輪=星座早見の留め金説」とも整合します。また同書で「残された問題」とされた、“どうして賢治はさそりの直前に「双子の星」挿入したのか”という問題の答えも導き出しま…

銀河鉄道は西進したのか

南十字の停車場の地上座標は単純計算で求めることができました。ここでは、もうすこし別な視点から飛跡を分析してみます。 イタリアの経度は東経10度近辺です。したがって、イタリアから西経150度のハワイまでは経度にして160度です。160度を時差…

北緯20度、西経150度

ジョバンニとカムパネルラは白鳥の停車場の停車時間を利用してプリオシン海岸に向かいます。プリオシン海岸ではクルミの化石が出土します。特徴的です。クルミの化石が出土する花巻の北上川河岸、賢治が名付けたイギリス海岸と密接な関連を想起させられます…