照井謹二郎 追憶ふくろふ 1946年

初出 『農民芸術』第一輯 1946年5月
所収 宮澤賢治研究資料集成 第2巻

「二十六夜」誕生エピソードのもうひとつです。このエピソードを見つけたのは最近です。二枚貝説もほぼまとまって、「二十六夜」の成立時期をより裏づけるための資料が、先の資料の他にもないのかと思い、宮澤賢治研究資料集成の目次で照井謹二郎氏の名前を探しました。

内容は、「童話「二十六夜」が創られるまでに」とほぼ同じなのですが、「二十六夜」が夏休み中に書きあがっていたように賢治が照井氏に言ったように書かれています。が、こころ惹かれたのが次のセリフです。

 「おしそがしさうですけれども、きんじらうさんを
  一寸おかりしたいんですが・・・・・・」

このあとも謹二郎さんは、何度もなんども賢治に借り出されることがあったようです。賢治が北上川にリンゴを落としたというエピソードもそうですし、農業指導やいろいろな場所にもつれだしたようです。賢治が永眠する八ヶ月前に見舞ったエピソードも残っています。賢治にとって照井氏は、なにかしら特別な生徒だったような感じを強く受けます。

あくまで可能性の問題なのですが、照井氏が書き残したもので他の作品を読み解く鍵になっている可能性がおおいにあると思います。できれば、照井謹二郎氏が書き残したものをまとめて一冊の出版物にまとめてほしいと願っていますが、現実には実現は難しいでしょう。