天文年間 2005年度版 誠文堂新光社

8月の空のページに七夕の七月七日と上弦の月との関連が指摘されています。上弦の月は上半分が黒で下半分が白のかささぎの特徴と一致します。旧暦七月七日の天の川を横切って飛翔するかささぎとは、月の化身のことだったのです。

 「かささぎですねえ。頭の後ろのとこに毛がぴんと延びてますから。」

銀河鉄道の夜」のかささぎには別の特徴が与えられています。賢治はどこから、そのようなかささぎの特徴を調べたのでしょう。かなり、長い間、機会があれば、図鑑やらをあたってみていたのですが、いくらさがしても、頭のところに寝ぐせがあるようなかかさぎはみつかりません。

賢治が、実際に生きたかささぎを観察していた可能性は、ほとんどありません。かささぎは、現在、北九州の一部で見られるそうです。ただし、元来、かささぎは、日本本土には生息しておらず、秀吉の朝鮮侵略の頃に日本に持ち込まれたのが着生したという説が紹介されています。関東を南限とする賢治の行動範囲の中に、かささぎを観測できた場所は存在しません。

なぜ、「銀河鉄道の夜」のかささぎが、頭の後ろの毛が問題にされるのかが不思議です。今もって謎です。