俵万智 りんごの涙 文芸春秋 1989年11月

「りんごの涙」という題名にひかれて購入したのですが、偶然、あの有名なサラダ記念日の七月六日というのが、旧暦の七月六日だったことを知りました。あわせて、“文月の六日”が“七月六日”なのだということも知りました。

ちょうど、「銀河鉄道の夜」の“かささぎ”が七夕の暗喩ではないかと、いろいろと資料を探していた頃のことでした。江戸時代の用例と、現代で旧暦の用例があったこと、七夕が秋の季語であること、あわせて、旧暦の七夕では烏瓜の花の季節には遅すぎることなど、さらには、旧暦と新暦が形成する十字、鷲座と琴座の関係、ジョバンニの家から黒い丘へのルート。

ほんとうにいろいろなことが、「たなばたの予感」という見開き2ページにもみたない小さなエッセイを読んだことで自律的に収まるべきところに収まったとでもいうように形になってゆきました。