2008-01-01から1年間の記事一覧

Cor Christ という知識

ところで、いったいぜんたい賢治はどこから南十字と"Cor Christ"の知識を得たのでしょうか。 賢治自身も聖書を読んでいたという清六氏の証言があります。また、真っ先に思いつくのは、キリスト教信者であり賢治の友人でもあった斉藤宗次郎氏の存在です。しか…

ジョバンニの切符

ジョバンニの切符とはなんでしょうか。森・堀尾「曼荼羅」説、入沢・天沢「マラルメの「音楽と文芸」」説、西田良子「妙法蓮華経」説、など多々あります。ただ、わたしはちょっと違った見方を持っています。 ジョバンニの切符を見終えた車掌はジョバンニに南…

賢治はいつジョバンニに恋をさせたのか

かほるが第0次稿から存在していたと仮定します。すでにジョバンニとの関係も第1次稿のように描かれていて、としがそれを読んでいたとするならば、としにとって、かほるという存在はどのように映ったでしょうか。 かほる:物語の中でジョバンニが恋情を抱く…

ジョバンニの恋

第1次稿から第4次稿まで、かほるに関し、一貫して変わらない記述があります。 美しく頬をかがやかせて 「・・・ まあ、きれいなそら」 わたしは、この部分は、単なる形容であるとするよりも、抒情と解すべきと考えます。 森鴎外は作品「大塩平八郎」の叙事に…

「銀河鉄道の夜」の成立時期

「銀河鉄道の夜」の第1次稿の構成は独特です。前半がなく後半のみです。なぜ、前半が断片すらないのでしょうか。「銀河鉄道の夜」は、第1次稿から第4次稿まで現存しており、第2次稿以降は、それ以前の原稿の書き直し分、差し替え分とされています。なら…

「二十六夜」と「やまなし」の成立時期について

「二十六夜」の成立時期 作品「二十六夜」については、照井謹二郎氏の獅子鼻のフクロウのエピソードと、夏休み中の二十六夜が大正11年8月18日(金)が旧暦6月26日であったことから、大正11年8月下旬としてよいと思われます。 農場実習が終わった後で、小…

鳥捕りとジョバンニ父のアナロジー

チョコレートよりもおいしいお菓子を差し出す鳥捕り。銀河鉄道は、イギリスとタイタニック沈没位置の中間を飛行中です。ちょうどアイスランド上空にさしかかるあたりです。 鳥捕りの押し葉は、ジョバンニたちの食感では、ぽくぽくと固めた雪を食べているかの…

祈りの姿

しかし、そもそも銀河鉄道が来迎列車ならば、単純に西に向かいさえすればいいものを、なぜ南下するのでしょうか。その上、最初に北上までしています。北上することに何か意味があるのだろうか、という疑問が生じます。じつは、この疑問こそが、作品「銀河鉄…

銀河ステーションはどこ

銀河鉄道は西進していた、という解釈は、竹内・原田「宮沢賢治・時空の旅人」の「天気輪=星座早見の留め金説」とも整合します。また同書で「残された問題」とされた、“どうして賢治はさそりの直前に「双子の星」挿入したのか”という問題の答えも導き出しま…

銀河鉄道は西進したのか

南十字の停車場の地上座標は単純計算で求めることができました。ここでは、もうすこし別な視点から飛跡を分析してみます。 イタリアの経度は東経10度近辺です。したがって、イタリアから西経150度のハワイまでは経度にして160度です。160度を時差…

北緯20度、西経150度

ジョバンニとカムパネルラは白鳥の停車場の停車時間を利用してプリオシン海岸に向かいます。プリオシン海岸ではクルミの化石が出土します。特徴的です。クルミの化石が出土する花巻の北上川河岸、賢治が名付けたイギリス海岸と密接な関連を想起させられます…

銀河鉄道は南下したのか

銀河鉄道は北十字から南十字へと走ります。白鳥座、鷲座、いて座、蠍座、ケンタウルス座、南十字。夏の星座を北から南へと南下しています。さまざまな「銀河鉄道の夜」関連の書籍を読んでも、例外なく銀河鉄道は南下してゆくイメージで読まれています。なぜ…

「やまなし」のかばの華

三作品に共通するモチーフとして花があります。 「やまなし」ではかばの華(ヤマザクラの花)が鎮魂の意味で流されます。じつは「銀河鉄道の夜」でも華は流されています。それは“烏瓜のあかり”です。たいていの方は“烏瓜のあかり”とは小さな烏瓜の青い実の中…

カムパネルラは天上にいけたのか

さて、「銀河鉄道の夜」は「やまなし」や「二十六夜」とはどう関連するのでしょう。 ジョバンニは、鳥捕りがいうところの、ほんとうの天上にいける切符をもっていました。だとすると、カンパネルラが持っていた切符は、ほんとうの天上行きの切符ではなかった…

「やまなし」の大1小2

「やまなし」には小型の蟹が二匹と大型が一匹でてきます 来迎三尊を思い出してください。仏像や仏画では阿弥陀は大きく、脇時の観音・勢至は小さく作られ描かれています。大1小2、つまり、父蟹は阿弥陀に、子蟹たちは観音・勢至になぞらえられているのです…

作品群としての「やまなし」「二十六夜」「銀河鉄道の夜」

「二十六夜」は普通の意味での"童話"ではありません。中学生以下には読めないだろうし、小学生以下では親に読んでもらっても言葉の意味が解らない。親も仏教用語の説明に困る。高校生以上でもほとんどの人が挫折することでしょう。たとえ通読できたとしても…

羅須地人協会

アナグラムの考察のついでに、ちょっと脱線します。 遠藤周作「わたしが・棄てた・女」、ヒロインの名を“みつ”といいます。遠藤周作氏によると、“みつ”とは“罪(つみ)”の真逆で“罪なき者=イエス・キリスト”の意だそうです。まったく同じ用法が賢治と同時代…

「やまなし」、イサドとは

###「やまなし」、イサドとは 「やまなし」ではクラムボンともうひとつイサドという言葉が謎とされています。 父蟹「もうねろねろ。おそいぞ。あしたイサドへ連れていかんぞ。」 はじめ、わたしは、この個所はふつうに方言として読んでました。「あした、“い…

ドラマ「二十六夜待ち」

「やまなし」を読み解くためには「二十六夜」の精読が必要です。しかし、「二十六夜」を精読するには理由が必要です。 わたしが「二十六夜」を精読したきっかけは、金八先生の武田鉄矢氏が「二十六夜待ち」という作品を書き、それが絵本になり、同名のテレビ…