トウモコロシとオチャマタクシ
妻が見つけました。壺井栄「孤児ミギー」という作品内の一節です
「あ、風がいるよ、たくさんの風がいるよ、おかあちゃん。」
ミギーは畑のほうを見ながらいいます。
「風がいる?どこに。」
お母さんがわざとたずねると、
「あすこにいるじゃねぇか。トウモコロシのとこにいっぱいいるよ。風は、長いね。」
指さす畑には、トウモロコシの長く青い葉が風に吹かれて
サヤサヤと音をたてているのでした。トウモロコシをトウモコロシといい、
オタマジャクシをオチャマタクシというミギーが、「いるじゃねぇか。」と
べらんめえことばでいうのです。(壺井栄児童文学全集4)
さらには、壺井栄原作、映画「母のない子と子のない母と」にて、主人公のおとら小母さんを演じていたのが北林谷栄さん。
トトロでの「かんたーっ」というセリフは今でも耳に残っています。メイのセリフと合わせ、もはや、「となりのトトロ」での北林谷栄さんのキャスティングは偶然ではありえないという感を強く持ちます。すなわち、「となりのトトロ」は壺井栄作品へのオマージュを内包した作品でもあった、ということです。もちろん、宮沢賢治「やまなし」をモチーフとしていたであろうことも疑いえません。
また、妻によると、壺井栄児童文学全集には、「ハイジを読みたい」という女の子が出てくる作品もあるのだとか。続きを読みたくて兄に書店に連れて行ってほしいとたのんだり、行けば行ったで書店のおじさんににらまれてしまったりするのだそうです。
「アルプスの少女ハイジ」。宮崎駿監督がどこまで企画立ち上げに関わっていたのかは知るすべはないのですが、壺井栄作品との関わりがモチベーションになった可能性もなきにしもあらずです。ただ、わたしにとって、壺井栄作品は守備範囲ではありません。これから先もこれ以上掘り下げることはありません。どなたか、掘り下げてみられると面白いことが見つかるかもしれません。
余談ですが、その昔、「宇宙戦艦ヤマト」は「アルプスの少女ハイジ」の高視聴率のせいで、予定より早く地球に帰ってこざるをえなかった、とかなんとか。ほんと、余談ですが。
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