アニメ 輪るピングドラム 第19話

消えた多蕗。

突如、出現した高倉両親。両親と冠葉の会話に中身はない。おそらく、あの両親は偽物。前回の多蕗黒化の意味を、冠葉がアルバイトしている組織が疑念を持った結果であろうと推測する。多蕗が高倉両親の消息を知りたがっていたのは、多蕗個人の思惑によるものなのか、あるいは、他の組織に操られたことなのか、という疑念。多蕗が消えたとうことは、冠葉が、常時、多蕗の監視下にある可能性が高い。逆に多蕗をニセの高倉両親で誘い出し逆監視できれば、多蕗の本当の目的を知ることができる。

冠葉のバイトの内容は、はからずも、17話で陽毬が言った“迷彩色”に絡んでいるはず。陽毬の表層は冠葉のバイトの実態を知らなくとも、陽毬の深層(クリ姫)は1号から報告を受けて知っているはず。“迷彩色”は、陽毬の深層の知識が言わせた言葉ではないのか。

ゆりにとって多蕗の存在は、本来、桃華の想い人。桃華が日記に記した多蕗への想いを、同時にゆりに語っていたろうか。おろらく語っていたのかもしれない。ゆりの行動は苹果の行動と被るものだった。苹果は日記の記述を実現しようと行動していた。であれば、ゆりの行動は、プロジェクトMまでも実現していたはず。しかし、ゆりは浮気に走っている。家のソファーに互いに座るゆりと多蕗。二人の間には広く開いた空間。多蕗のグラスのそばに桃華用のグラス。

ゆりも、苹果の計画をなぞることで桃華になりたかったのかもしれない。嘘の桃華になって、嘘がやがて真実になれば、それは、ほんとうの桃華である。ゆりがほんとうの桃華になれば、そして、完全な日記な日記があれば、そして乗り換えの呪文が判りさえすれば、ゆりが日記と呪文を使って桃華を取り戻せる。そのような論理か。



陽毬の居場所


晶馬の横に苹果。苹果は強引だ。晶馬にはぶりっ子は効かないけれど力ずくは効果がある。強引にそばに寄っても今の晶馬は嫌がらない。そんなふたりの姿が、陽毬には晶馬の横に苹果の居場所ができたように見えてしまう。逆に、陽毬の場所がなくなってしまったように思えてします。テレビで歌うダブルH。そこにも陽毬の居場所はあるはずもない。

 「私は死ぬのね。死なないよ。うそ。どんな言葉を言って欲しいのかな」

死んでしまうのなら居場所はいらない。けれども眞悧先生は、死なないと言う。死なないのなら居場所が必要。家族、学校、仕事、恋愛、…。




真沙子と眞悧の対峙

呪文に意味はない。眞悧は魔法使い。眞悧は、この間違った世界を正したい。親たちが叶えられなかった夢を実現してもらいたい。眞悧は日記を燃やせない。眞悧は日記があるとゲームに勝てない。

今の世界は間違った世界。ということは、16年前、高倉父は世界をピースすることに成功していたのだろうか。“世界をピースする”とは、日の神(眞悧)が月の世界も支配している世界を、2つのピース、この作品の文脈では昼の世界と夜の世界の2つの世界に戻すこと。それが、今ふたたび、闇ウサギに支配されている。夜の女神はいない。やはり、16年前、高倉父は失敗したのではないだろうか。つまり、今の世界については眞悧は嘘をついているのではないか。この間違った世界を正したい=親たちが叶えられなかった夢、なのではないか。



陽毬の記憶

真沙子が陽毬に本当の妹ではないと告げる。思い出し玉。“私(陽毬)は何者か”という自問。子供ブロイラー。回想:“世界”から捨てられた日。陽毬は“親”にではなく“世界”に捨てられた。世界の意味は?氷の世界→南極→ペンギンが棲む世界という連想。必ずしも地理的な意味での南極ではないのかもしれない。。

シュレッダーへと続くベルトコンベア。陽毬「何者にもなれなかった。でも、これ(ニ色のマフラー)は持っていけるよね」。

ニ色のマフラーの意味。ニ色は昼と夜の暗喩。それは月の女神になりうる“資格”のことではないのか。であれば、女神(神)になれない者が“何者にもなれない者”の意味になる。陽毬は有資格者である。けれども、あの時点で、女神にはなれていない。

なぜ、女神になれていないのか。女神になるためには魔法が必要。魔法の呪文が必要。魔法の果実が必要。そして、魔法使いが必要。魔法使いが運命の相手。晶馬が魔法使いだった。晶馬が差し出す魔法の果実。しかし、ふたりは魔法の果実を失った。それが“ピングドラム”なのだろうか。そして、ピングドラム、あるは、ピングドラムへと導く鍵は、いつしか苹果の元へ。

  クリ姫「運命日記とやらをそこの小僧に渡しやがれ」

ひょっとして、あの時、苹果が晶馬に日記を渡していたら、晶馬が「セイゾンセンリャクシマショウカ」と唱えていたら、ピンドラは第6話で完結していたのかもしれない。


追記:陽毬のウサギの靴下が2号と3号。1号はマリオからの借り物で正体はカラス

 

つづく >輪るピングドラム 第20話