アニメ 輪るピングドラム 第18話

陽毬はどうやって助かったか

陽毬の落下、地上に落下するゴンドラ、床に座り込む冠葉、陽毬を抱える多蕗、と、あたかも、一瞬のように演出されていましたが、あれが十数分間の出来事であれば、可能でなくもないと思います。ゴンドラが落下したとき、地上にいた晶馬が、冠葉たちがいる高層フロアまで階段を駆け上がってくる時間を勘案するとかなりの時間があったはずですから。

また、1号は手にダメージを受けていましたが、3号は無傷で毛糸玉を巻いていました。“毛糸玉を巻いていた”というのが多蕗による陽毬救出方法を暗示しているのかもしれません。たとえば、陽毬には元々命綱が付けれられていた、と考えればいいのかもしれません。もっとも、陽毬が地上まで落下していたとしても、軽傷ですんだはずです。なぜなら、ダメージは3号がほとんど受け止める、そうゆう役割ですしそうゆう設定でしょうから。

ただ、陽毬は、病院に戻るのでしょうか。病院を戦場に選ぶのでしょうか。


桃華の記憶

子供ブロイラーで、多蕗がシュレッダーに落ちそうになる手を桃華が支えた。あの記憶は、本当に、16年前にあったそのままなのでしょうか。いらなくなった子供の集まるところ。透明な存在。きわめて観念的です。

一つの可能性として、記憶が、冠葉が滑車のワイアーにぶら下がったあの瞬間、多蕗と桃華の出会いの記憶として多蕗に埋め込まれたものだとしたらどうでしょう。多蕗が「桃華」とつぶやいた瞬間に桃華が介入してきたと解釈できないでしょうか。

つまり、闇ウサギによって黒化した多蕗を、闇ウサギから解放するために、まさに、あの瞬間に桃華が介入してきたとは考えられないでしょうか。



ゆりの平手打ち

地上に降り立った多蕗に「利用したわね」というゆり。「君こそ二人を呼び出して何をするつもだったんだい」ゆりが苹果と陽毬を誘い出したことを知っていました。ということは、苹果やゆりがいたヨザワヤのフロアに多蕗もいたということ。苹果と陽毬の会話から、ゆりが二人と待ち合わせの約束をしたことをを知る。ゆりに電話をするが、ゆりは出ない。ゆりの様子がおかしいことを直感。いよいよ、ゆりが高倉の家族に危害を加えそうな様子。

多蕗が口にした“偽の家族”という言葉に瞬時に反応して多蕗を平手打ちするゆり。たぶん、あの言葉は、ゆりにとって紛れも無く真実で、聞きたくなかった言葉で、打ち消したかった言葉。しかし、打ち消すことはできず、“さよなら”という別離の言葉が答として返ってくる。

利用していたのはゆり。ただし、高倉憎さで、暴走しようとする自分を、多蕗にしがみつくことで抑えこんでいた。それが“利用”という言葉の意味。

多蕗には暴走するゆりを止める手立てが、先に自らが行動することしかなかった。多蕗は、ゆりの言葉には言葉で受け止めていた。多蕗の言葉は本音。しかし、ついに、ゆりは行動に移そうとしている。多蕗はゆりに先んじて行動に移る。しかし、その決断自体、闇ウサギに使嗾されたもの。

多蕗はゆりがすがってきたことを悟っていたはず。その意味も知っていたはず。ゆりに苹果は晶馬が好きだと聞かされ、知っていると答える。多蕗は、ヒメホマレ事件での苹果のひとすじの涙の意味を正確に見透していた。したがって、ケロケロは演技。多蕗は演技派。おまけで、ゆりは武闘派(舞踏派w)

ゆりを受け止め、身をもってゆりの行動を止める。誰かを護るための自傷行為。それが多蕗のやさしさ。誰かを護るための代償としての自傷。それは桃華のやさしさでもある。

  あなたの心を聞いていた。あなたが大好きよ、私のために生きて、と桃華。

おそらく、桃華は、多蕗が手を潰した事情(たぶん、語られたまま見たままではない)を見抜いていたと思われる。

ケージの中の黒い鳥。母から与えられた黒い鳥は多蕗の心情そのもの。いつしか、ケージに閉じ込められるようになった黒い鳥。そんな黒い鳥をケージから解放したのは桃華。黒い鳥は、白い鳥に変わって飛んでゆく。白い鳥も多蕗そのもの。桃華といた時間の中の飛翔する多蕗自身。桃華が消えたあと、鳥を探すようになる多蕗。なぜなら、鳥が飛び立つ所には桃華がいるかもしれないから。

  「苹果ちゃん、僕のようになっちゃダメだ」

自らケージの中に入る多蕗。反面教師。なぜ、多蕗はわざわざ苹果にあんなことを言いすてたのか。

  “罰は、いちばん理不尽じゃないとね”

ラスボスは苹果なのか?

 

つづく >輪るピングドラム 第19話