アニメ 輪るピングドラム 第14話
いやはや、今回は、演出回だったと思います
【苹果に冷たい晶馬】
晶馬「これ以上、表面的な言葉で傷つけあうことに何の意味があるんだ」
晶馬の願望、本性、本質、心情を2号の行動で読み解けば、“食いしん坊”と“女嫌い”。2号がことさらゴキブリを退治しようとするのは、おそらく、ゴキブリをムシ(女)に見立ててのことだろうと思います。
基本的に女を寄せ付けまいと誓っている晶馬は、ほかの女子にするように、苹果も冷たく突き放す。でも、これは苹果のことを思ってのことだろうと思います。晶馬はすでに十分に傷だらけなはずだからです。晶馬たちと行動を共にすることで苹果も傷つくと予見できるから、背中の苹果の涙声に顔には出さずに耐える晶馬だったと思います。
【眞悧とマフラー】
鷲尾医師がいなくなり、眞悧が医師として冠葉に応対する。陽毬が捨てたマフラーをした眞悧が鳥のポーズ。マフラーを翼に見立てているかのようです。他の患者には鷲尾医師が以前のまま応対しているのかも。
眞悧がシラセ・ソウヤの二人を従えている構図を「銀河鉄道の夜」で読み解けば、来迎三尊=三位一体説が相当すると思います。そして来迎三尊が大一小二の構図で現れるのは「やまなし」で、カニの親子の大一小二の構図です。
日の神と月の女神がそれぞれの従者と三位一体の構図をもっているのであれば、以下の構図が浮かび上がってきます。
シラセ-眞悧-ソウヤ
多蕗-桃果-ゆり
真沙子-マリオ-??
冠葉-陽毬-晶馬
【落胆の真沙子】
冠葉の行動を非難する真沙子。冠葉の仕事とは、犯罪すれすれの仕事なのでしょうか。両親と同じようにフレームアップの罠が待っていることがほとんど自明なのかもしれません。
しかし、そもそも、なぜ、真沙子は冠葉に執着するのでしょうか。愛情のためだけとは考えづらいくらい執着していると感じます。
(左、床に手をついた夏芽、右、冠葉)
夏芽「どうしても私じゃだめってことね」
冠葉「いい加減にしろよ」
夏芽「よろしくてよ、私は私のやり方で幸せをつかむから
マリオさんは必ずわたくしが救ってみせる」
左(下手)、右(上手)というのが演出の基本です。下手には弱い存在を、上手には強い存在を置く。このシーンの真沙子は、これまでで最も弱々しい真沙子です。
この演出を加味して解釈すれば、まるで、マリオを救うためには本当であれば冠葉の存在も絶対に必要で、冠葉と真沙子の二人でなければマリオを救えない、といっているかのように聞こえます。
であれば、冠葉を陽毬と繋げるのではなく、マリオと繋いでみると、上の三位一体構造は、次のように変化します
シラセ-眞悧-ソウヤ
多蕗-桃果-ゆり
冠葉-マリオ-真沙子
晶馬-陽毬-??
もしも、この構図が成立するとするならば、??に相当するのは女性がふさわしいはずです。すると、ゆりが言う“運命の環”で陽毬と繋がれているのは、実は、冠葉ではなくて、苹果なのかもしれません。
シラセ-眞悧-ソウヤ
多蕗-桃果-ゆり
冠葉-マリオ-真沙子
晶馬-陽毬-苹果
これこそ、天球儀の赤く発行する4つの珠の意味するところなのではないでしょうか。
【嘘つき姫】
白鳥、ジャガーの車窓から見える白い鳥。白い鳥はゆりの願望。ゆりの願望は、同じように多蕗の願望。彼らの潜在意識は、自分たちが黒い鳥(カラス)、すなわち桃果=日の神だと感じているのかも。
(ノーマルモード)
ゆり「この世界は残酷なルールに支配されている。
求められる者と求められない者。
そのふたつを分けるラインが私には見える。
だからこそ私はファビュラスに成功した。」
(マニュアルモード→嘘つきモード)
ゆり「今や私は特別な存在。
もう誰も容易には私に近付くことはできない。
私の心にはけっして誰も触れさせない。
私は過去を捨てた! 」
(スキール音→停止→本音モード)
ゆり「嘘よ!この世界はみんな嘘で出来てる。
未来永劫、誰も本当の私を求めたりなんかしない。
あなただけだった。あなただけが私を美しいと言ってくれた。
会いたい。今すぐあなたに。 きっと会えるわよね。
だって約束したじゃない。私たちの繋がりは永遠だって。」
苹果が天下の公道で、思いっきり落ち込んでいるところにゆりが登場。いまだに苹果はゆりの監視下にあるようです。
(ノーマルモード)
ゆり「恋をしてるのね、かわいそうに。
でも初恋って実らないものよ。あたしにもかつてそういう人がいたわ。
だから苹果ちゃんのつらい気持ちとってもよくわかるの」
(マニュアルモード→嘘つきモード)
ゆり「そんなときは、女同士ぱぁっとファビュラスするのが一番なのよ」
人鳥荘。受付「いつもご贔屓にありがとうございます」。壁面の魚拓の数々。魚拓=釣果の意味。今宵、ゆりは釣りをする。あるいは、人面鳥(Haapi)が獲物となる人の娘を篭絡する。いつものように成功は期している。
露天風呂。苹果を薄衣へと誘導する。苹果「姉はどんな子でしたか」
(燃え上がる篝火→本音モード)
ゆり「世界は愛すべき者に充ちている。そう、このあたしも含めて。
桃果は私の世界を変えてくれた。
彼女といれば、どんな物も輝いて見えてた。
そうこの私も含めて。
姉妹って不思議ね。苹果ちゃん、あなたは桃果と同じ香りがする」
(燃え上がる篝火→嘘つきモード)
ゆり「(多蕗と結婚するのは)愛しているから。
嘘、ホントはあたしたち仮面夫婦なの。なんてね。
(スマッシュ→本音モード)
ゆり「本当は、わたしたち運命の輪でつながれているの」
【運命日記】
ゆり「桃果は死んでなんかいない。
ようやくこの時がきたわ。
すべては桃果の日記に記されていたとおり」
温泉旅館の浴衣の胸元から取り出すには日記はかさばり過ぎです。不自然だと思います。ここは、“ジョバンニの切符”のメタファなのだと思います。
ジョバンニは、すっかりあわててしまって、もしか上着のボケットにでも、
入っていゐたかと思いながら、手を入れて見ましたら、なにかおおきなた
たんだ紙切れににあたりました。こんなものが入ってゐたらうかと思って、
急いで出して見ましたら、それは四つに折ったはがきぐらゐの大きさの緑
色の紙でした。(「銀河鉄道の夜」宮沢賢治全集7)
ゆりは「桃果の日記」と言っていますが、この運命日記の正体は“ゆりの心臓”であり、やはり、これまでどおり「ゆりが桃果の名前で書いた運命日記」なのだと解釈します。
さて、桃果は生きているのか死んでいるのか。眞悧が病院で命の苹果を補充したベッドに横たわっている患者が桃果の肉体だと思います。しかし、桃果の魂は過去世に転生してゆりの魂となっているのだと思います。
【ピングドラム、世界の秘密】
はてさて、苹果の一大事です。苹果は危機を脱出できるのでしょうか。
いや、たぶん、脱出できないんじゃないかと思います。拉致される直前に苹果が持っていた雑誌の裏表紙に“時籠ゆりは回るドラム”とありました。ご丁寧にマーカまで引いて。
“時籠ゆりは回るドラム”ならば、“苹果はピング”なのではないでしょうか。ふたつが合わさると“ピングドラム”。それも“回るピングドラム”そういえば、2chに“苹果”の北京語読みが“ピング”であるという解読がありました。
次回は、物語も後半が過ぎて、いよいよ“ピングドラム”が出現する可能性がかなり大です。同時に、陽毬は退院です。“世界の秘密が明かされた時”が陽毬が退院する時だからです。
蛇足ながら、“ピングドラム”とは、牛乳マークのシールがついたリンゴじゃないかと予想しています。