アニメ 輪るピングドラム 第24話(終)

ピングドラムとは

冠葉から渡された半分のリンゴの方ではなく、渡されなかった半分のリンゴの方。陽毬の手から消えていった半分のリンゴの方。それがピングドラム

ピングドラムとは、”選ばれなかった未来”、あるいは、”選ばなかった未来”のこと。子供ブロイラーとは、ピングドラムをすりつぶす場所・工場のこと。ピングドラムをすりつぶされた子供たちには敷かれたレールに沿った未来しかない。それが透明になるということ。

果実の形をしたリンゴ(苹果)とは、未来にたどり着くまでの“命”。子供たちは幼ければ幼いほどたくさんのリンゴを持っている。ひとつづつ、1ヶ月に1個ずつリンゴを消化しつつ未来へと命の歩みをつづける。眞悧には、人からリンゴを与奪する月の女神の能力がある。高倉両親が指名手配される3日前から、陽毬は1日に1個ずつリンゴ(命)をとり出されていた。それが眞悧が与えた罰。マリオも同じような事情だろう。

晶馬が言う、運命の果実を一緒に食べようとは、未来を共有しよう=愛してる、と同義。賢治による”愛”の定義は、“どこまでも一緒に行かうとする”(「小岩井農場」)こと。したがって、”未来の共有”とは賢治風の愛。


サソリの炎

駅名票:命(the lives) = 蠍の炎(the Scorpion fire)

命(複数形)とサソリの炎(複数形なし、罰)とは可換であるとの意味。炎はたくさんの命と交換することができる=たくさんの命を救うことができるという命題。

冠葉父と高倉両親もサソリの炎の持ち主。炎はたくさんの命を救うことになるという命題を信じ、しかし、手段を誤ってしまう。というより。誤らさせられてしまう。なぜ誤るのか。それは、眞悧が冠葉父や高倉両親の心の暗黒面を煽りたてたため。結果、たくさんの命を奪うことになる“テロの炎”を使う。“テロの炎”は多くの人びとを殺傷してしまうことになる罰。


乗り換えの呪文

冠葉の命と陽毬の罰とを交換する苹果の乗り換えの呪文が”運命の果実を一緒に食べよう”
晶馬の命と苹果の罰とを交換する晶馬の乗り換えの呪文が”ありがとう。愛してる”

陽毬は南十字(乗り換え後の毬が生存する世界)で銀河鉄道を降りた、冠葉と晶馬はそのまま乗って行った。ペンギン達がついて行った。


運命日記

もともとは、空の孔分室にあった書物。タイトルは「カエルくん妹を救う」。日記の記述にそってひとつひとつ実現してゆくと、実現した未来が永遠の真実になるという預言書だが過去と未来は曖昧。


運命の乗り換えの副作用。

乗り換えには、関係者全員のピングドラムが使われた。桃華の言う、あなたたちのピングドラムの”あなたたち”とは、晶馬と冠葉だけに限らない。多蕗、ゆり、真沙子、マリオ、陽毬、苹果、池部の叔父夫婦も含んだ全員のピングドラムのこと。

苹果は、苹果自身が残留する未来は選ばなかった。しかし、それがゆえに苹果が残留する未来となった。

前の世界では、多蕗は桃果に囚われている、ゆえに多蕗がゆりを愛するという未来は選び得なかった。しかし、乗り換え後の世界では、多蕗がゆりを愛するという、選ばれることがなかったはずの未来、(ピングドラム)が使われた。前世の記憶があることと未来が可変であったこととは別のようだ。

ヒカリとヒバリのピングドラムも使われた。ヒカリとヒバリの新世界での”ダブルH”という未来がそれ。それ自体が前世界では選ばれなかった未来。では、ヒカリとヒバリが前の世界で選んでいた未来とは何か。それは当然、”トリプルH”という未来。ふたりは、いつの日か、”トリプルH”という未来が来ることを信じて、ずっと、待っていた。だから、陽毬のマフラーをよろこんで受け取ったし新曲CDを渡しにもやって来た。


ペンギン帽

桃華が持ち去るペンギン帽。陽毬・マリオが月の女神・日の神という運命から解放される。


晶馬と冠葉はどこに

二枚貝説を適用するw。銀河鉄道から消えた冠葉(カンパネルラ)は、過去世に転生し真沙子とマリオの父となる。また、晶馬(ジョバンニ)は、陽毬や苹果と同一時間軸の地上に戻る。さいわいなことに、ピンドラの世界は多元宇宙世界でないようだ。銀河鉄道を降りた晶馬は病気の母の元へ牛乳を持って帰る。ある日、苹果が振りむくと山下に絡まれている晶馬がそこにいる。


総評

開いたまま終わるかとおもいきや、十分ではないけれど必要な分だけ、この最終回30分ですっきりきっちりと畳みこみました。さすがです。といっても他の作品は未見ですが…。ピンドラは、わたし的には、まどマギを超えました。一票の支持票代わりに、iTuneで「HHH」 TRIPLE Hを買いました。

 

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