アニメ 輪るピングドラム 第12話

1995.3.20

医師の机に高倉父の写真「第36次南極環境防衛隊」。Wikipediaによると、「第36次南極越冬隊」は1995年1月~1996年1月だそうです。防衛隊の高倉父(A)。男の子が生まれたという電話を受ける高倉父(B)。テロを仕掛けた犯罪組織の高倉父(C)。三者は、すべて同一人物なのでしょうか。また、眞悧が蘇生させたベッドの人物とは誰なのでしょうか。

多蕗登場。地下鉄の入口の混雑、幾筋も立ち上る煙。桃華葬儀。桃華は、1本遅い電車に乗っていたという事実。多蕗の指の傷。かごの中の鳥。桃華の遺体は不明。そして、運命日記が苹果の手に。ここでまた謎のオンパレードです。


2011.11.12

満月、休日、ゆえに、11月12日(土)。消える3号

高倉両親は、16年前の事件を起こした犯罪組織の指導的幹部。クリ姫は、“呪われた運命の子ら”という言い方をした。

メリーさんの羊。メリーさんが女神から灰を盗んで与えるとリンゴの木が蘇生する。しかし、盗んだものには罰が与えられる。

4年前、高倉千江美が死んだ可能性が高くなりました。黒ウサギ(?)にそそのかされた高倉父は、千江美(知恵の実)を蘇生させた。そして、女神は陽毬に罰を与えた。

二枚貝説で恐縮ですが、最初に眞悧が陽毬に与えた苹果は“命”という解釈です。再びの“命の苹果”。眞悧は命の持続時間を冠葉に電話で伝えています。そして、命の持続時間は28.25日(10.15夕~11.12夜)。これは月の公転周期とほぼ同じです。

  「お母さんがね立派な戸棚や本のあるところに居てね、僕の方を見て手を出
   してにこにこ笑ったよ。ぼくおっかさん。りんごをひろって、きてあげませうか
   云ったら目が醒めちゃった。」(「銀河鉄道の夜宮沢賢治全集7 ちくま文庫

うさぎを連れているのは、眞悧=おっかさん=月の女神の意味かもしれません。おそらく、今後も、陽毬は27.5日ごとに心肺停止と蘇生を繰り返すと予想します。また、3号も症状軽減の役割を担っていますので同じように出現と消滅を繰り返すはずです。でも、クリ姫については不明です。

--------- 追記2011.10.4
経過日数が曖昧なので、別の視点ということで旧暦を調べて見ました。リンゴの延命期間が月の公転周期とするならば、12話の時制は11月12日(土)よりも、11月13日のほうが収まりがいいようです。第1話では、陽毬が蘇生した翌日以降、晶馬だけが登校し授業風景の黒板の日付が10月15日(土)でした。第9話での図書館の本日も10月15日(土)でした。これは矛盾していますが、土曜日に授業がある都立ということも違和感がありますし、よりはっきりと認知できた第9話での日付を取ろうと思います。千恵美の指輪が消滅したり、結構、ミスがあるのかもしれません。
10月15日(土、旧暦9月19日、月齢17.7)
11月13日(日、旧暦10月18日、月齢17.3)
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  クリ姫「以前、貴様から奪った代償は電池切れということかな。もう手遅れだ。
      わらわは帰る。ゆえに、この娘の命は尽きる」

たぶん、この認識は逆で、クリ姫の存在維持には陽毬に命があることが前提条件で、さらに陽毬以外の命もあわせて必要なのだと思います。最初の場合は冠葉の命でした。もう一度、という冠葉に、

  クリ姫「無駄だ、あれは恋みたいなもの。初めてのキスのようなもの。
      一度きりしか効かぬ」

クリ姫は“初恋”とは言っていません。あたかも、恋とは存在のすべての期間において唯一度きりのことだと。そう、クリ姫は運命の花嫁。運命の相手がいます。これは、かなりの部分オノロケに近いと思います。眞悧のキスを拒絶したのは眞悧が運命の相手ではないから、というより、少なくとも、陽毬自身がキスをしたことがないと思っているから。陽毬は冠葉にされたキスのことは覚えていないようです。

空の孔分室で、陽毬の中のクリ姫を顕現させたのは眞悧です。冠葉の慟哭に「そう君じゃダメさ。だよね」と言い放つ。それは、つまり、冠葉は陽毬の運命の人ではないからという意味だと思います。



今夜はロールキャベツか、そうじゃ、お主の大好物じゃというのは、続いて、生存戦略でクリ姫が脱衣してゆく状況の伏線になっています。

  クリ姫「ふむ、赤く燃えるサソリの魂か」

銀河鉄道の夜」からの引用だと思います。冠葉の赤髪はさそり座の主星の色。ならば、晶馬の青髪は、青く輝く“よだかの星”でしょうか。いじめのメタファは、陽毬より晶馬の方にあったのかもしれません。では、「銀河鉄道の夜」には“よだかの星”が登場しているのかというと、次のジョバンニの独白があります。だた、ピンドラで、そこまでの引用をしているのかと問われれば、ちと読みすぎかなという感はあります。

  あすこの岸のずうっと向ふにまるで煙のやうな小さな青い火が見える。
  (「銀河鉄道の夜宮沢賢治全集7 ちくま文庫


また、別の見方もあって、「双子の星」でのサソリ座はカラス座と戦い、相打ちとなり重症を負います。

 「お前たちはピングドラムを失った。
  世界は再び闇うさぎを呼び込んだ。
  運命の日はすぐそこまで近づいている
  ピングドラムを見つけろ。奴を止めろ」

奴とは、おそらくカラスのメタファを背負った者。読みすぎでなければ、冠葉は対カラス戦闘要員といったところです。

では、カラスとは誰のことか。いまのところ多蕗は直接カラスとは繋がっていないようです。では、時籠ゆり・・・、カラスを操って苹果弁当を空にしたのかも。夏芽はどうか。夏芽のエメラルダスはカラスのように黒い。

そして、マリオ。陽毬と違ってペンギンを持たない。差し迫った命の危険はないようです。ただし、ピングドラムを入手しないと、逆に言えば、クリ姫がピングドラムを入手してしまうことと、マリオの命の危機が同義なのかもしれません。

一説では、中国ではカラスは太陽の中に棲む鳥だといい、月のうさぎの対比とされます。また、からす座は「双子の星」で以下のように歌に歌われており、“よだかの星”は、からす座を包囲あるいは構成するする囲みの一星になるようです。

  あまのがはの にしのきし
  すこし離れた そらの井戸
  みづはころゝ、そこもきらら、
  まはりをかこむ あをいほし。
  夜鷹ふくろう、ちどり、かけす、
  来よとすれども、できもせぬ。
  (「双子の星」宮沢賢治全集5 ちくま文庫

さらに、からす座は“井戸”に例えられています。そして、「銀河鉄道の夜」のジョバンニは下車したあと、牛乳を手に入れて帰るのです。その上で陽毬をジョバンニの病気の母に重ねてみます。そのようにすると、“ピングドラム”とは、ほぼ牛乳と酷似した液状の物体なのではないだろうかという推測が導出できます。

晶馬がピングドラムを手に入れる。陽毬に飲ませようとする。陽毬は牛乳は飲めないと拒絶する。最後の最後にドラバタ劇が待っていそうです。なんと、第3話の伏線がそこで生きるのかもしれません。

 

つづく >輪るピングドラム 第13話