アニメ 輪るピングドラム 第11話

夏芽家の前に立つ冠葉。1号は武装。ビジョンブラッドのセータ、低く流れるドボルザーク。赤玉をあそこから持ちだしたのかと冠葉。日記を返せ。マリオ登場、目が赤い。

 夏芽「日記は渡さない。マリオさんの命を救うためなら…、まさかこんな形で16年前の呪いが実現するとはね。
    わたくしたちは、半分しか日記を確保していないこと、気づいてないようね」

第10話での晶馬の拉致を知らせる最初の脅迫メールに「日記の半分」という言葉がありました。今回の夏芽のセリフと矛盾します。これは、あの脅迫メールは夏芽が送ったものではないことを示唆しています。また、脅迫メールにはLIVE映像も添えられていました。が、よく見ると、映像が3カットもあります。1台のケイタイのカメラで3カットのLIVE映像は無理です。つまり、あれは、未知の第三者が編集した映像を送ったということになります。GPSでの位置表示も病院の外を示しているようでした。それならば、脅迫メールの送り主はいったいだれだったのでしょう。脅迫メールの送り主は、苹果があっさり運命日記を手放したことも知っています。



地下鉄。晶馬のとなりに寄り添う苹果の目の下がほんのり色づいています。日記を渡したことを責める晶馬。馬鹿よばわりにブチ切れる苹果。本日の標語「その一言がが命取り」。プロジェクトMの続行を宣言する苹果。

 晶馬「君のことじゃないだろ」
 苹果「桃華はあたし」
 晶馬「おかしいよ、君は君、他の誰でもないじゃないか。手伝わないよ」。



ヒメホマレガエルの汗を採取。多蕗を呼び出し、飲ませる。多蕗家の寝室。寸前で多蕗を押しやる苹果。多蕗錯乱。そこに、時籠ゆり帰宅。錯乱する多蕗の声に、ゆり「まあ」。そして、「あなたは高倉晶馬くんのことが好きなのだと思ってたわ。…(やさしく)おばかさん」

ゆりの余裕が変ですが、そもそも、苹果が晶馬を好きだということを、ゆりは何時見抜いていたのでしょうか。ゆりと苹果&晶馬の接触の機会は、公園デートの時と、婚約発表会の時の2回だけだったはずです。つまり、ゆりの洞察は、ゆりが苹果、そして必然的に一緒に行動する晶馬の二人を観察していた、ということの証なのだと思います。すなわち、苹果はゆりに観察されています。ならば、ヒメホマレの儀式や苹果が多蕗を呼び出したことを知っていたとしても不思議はないと思います。そして、さすがに、多蕗にヒメホマレの汗入飲料を渡される可能性を知らせていたと思われます。

あとは、全部、多蕗の芝居です。その証拠は、ベッドで横たわる苹果に覆いかぶさるのではなく、四つん這いになっていたことです。多蕗の理性を感じます。たとえ、苹果が寸前で逃げていなかったとしても、状況に応じた幾つかのケースは想定済みだったことでしょう。あとは、徹底的に芝居をするのみ。タイミングよくゆりが登場し、そんな多蕗の芝居っぷりを見たゆりの感嘆の「まあ」だったと思います。

ゆりの登場は、苹果がカレーを持参したときから、いつもいつも最高のタイミングです。多蕗が芝居をしていたとすると、苹果が多蕗の身辺をつきまとっていたことを、多蕗も知っていたということになります。多蕗もすこし裏があるのか。あるいは、単に、困ってゆりに相談したのか。それにしては、婚約は行き過ぎなように感じますが、中学生のゆりが運命日記の作者でしょうから、ゆりが多蕗と高校で多蕗と離れ離れになったことで、いよいよ、恋情に火がついていた可能性もなくはないと思います。恋とは逢えないといよいよ燃え上がるものです。

 日記の前半の所有者    :夏芽≠(バイクの女&脅迫メールの送り主)
 苹果の晶馬への恋心を知る者:ゆり&脅迫メールの送り主

 すなわち、

 日記の後半の所有者    :(バイクの女&脅迫メールの送り主)=ゆり



苹果のマンション。陽毬と晶馬が苹果を待っていた。切れる苹果。晶馬への恋心に気づいた苹果は、苹果のままでいたくなったということ。今の苹果は苹果でいたい。桃華になると苹果でいられない。葛藤に苛まれる苹果。そのはけ口が晶馬。苹果は、晶馬には自分を吐き出せるのです。クリ姫(陽毬)はそんな苹果の心情を理解。生存戦略。泣けメスザル。

話の流れで、明かされる設定。16年前の3月20日に苹果と冠葉と晶馬が生まれた。桃華が死んだのは冠葉と晶馬が生まれたせい。しかし、“殺した”とはいっていない。


さて、前回、晶馬と冠葉が肉体的に増強されているのでは、と書きましたが別の可能性も思いつきました。それは、“分けあう”というキーワードです。何を分けあったかというと、“ダメージ”です。トラックに引きずられても軽傷の冠葉、車に跳ねられても軽傷の晶馬。同時に、ペンギン1号・2号はダメージを受けていました。つまり、ペンギンたちにダメージを引き受ける役割があるのだと仮定すると、冠葉・晶馬のタフネスさは頷けます。

 命題1:ペンギンは、パートナーが受けた“ダメージ”のほとんどを引き受け、冒頭の1号のように“心情”を具現化し、“欲望”は増幅する。

ならば、3号の役割とは具体的には何でしょうか。3号が陽毬の“ダメージ”を引き受けているのだとすると、“ダメージ”とは何でしょうか。ひょっとして陽毬の“病気”なのではないでしょうか?

もしも、3号が陽毬の病気を引き受けているとするならば、ピンドラという物語のタイムテーブルの残余はそれほど長くはないのかもしれません。陽毬の編んでいるマフラーは、物語の終わる季節に間に合わせて企画されたのかもしれません。であれば、この物語は悲劇なのかもしれません。悲しい物語なのかもしれません。

 

 つづく >輪るピングドラム 第12話