アニメ 輪るピングドラム 第8話

落ちてゆく運命、引き裂かれる運命。

バイクの女は誰でしょう。順当な所では夏芽といいたいところですが、これまでに、夏芽と苹果の接点はなかったように思えます。夏芽の相手は冠葉のはずです。もし、バイクの女が夏芽ならば、冠葉も近くにいないとつじつまがあいません。

とすると、時籠ゆりが最右翼の候補です。あの場所に確実にいた人間ですし、ことごとく、苹果の思惑を潰しているように行動しているように思えます。だいいち、あんな高級マンションのオートロックが雷雨でこわれるなんて、嘘くさいったら。時籠登場は、かなり、きわどいタイミングでした。もしかしたら、時籠ゆりは多蕗を監視しているのかもしれません。あの高級マンションで水漏れとかいうのも変です。今のテクノロジーでは、コンシューマ・レベルでも相当の監視ができます。自宅WEBカメラでペットをVPNクライアントから常時監視なんてWiMAXでモバイルででも普通にできる時代ですから。時籠ゆりは、多蕗を監視していた、と考えるのが妥当だと思います。また、自宅、高級マンションの駐車場に時籠所有のバイクを置いていたなら、とつぜん、バイク姿で登場するのも十分に可能だと思います。なにせ、あの場所(自宅)にいたのですから。

さらに、時籠ゆりが多蕗を監視しているのなら、運命日記の存在にも気づいているはず。運命日記のとおりに行動している時籠ゆりなら、苹果から運命日記を取り上げてしまえば、時籠のこれからの行動を邪魔する苹果に対する後顧の憂いがなくなるとは考えないでしょうか。なぜ、時籠ゆりは運命日記の内容どおりに行動するのでしょうか。言い換えると、なぜ、時籠ゆりは、運命日記の内容を知っているのでしょうか。可能性のひとつは、運命日記の作者が時籠ゆりだから、という理由です。では、なぜ、時籠ゆりが“おぎのめ ももか”というペンネームを使ったのか。

「賢治は、銀河鉄道の夜の最終稿で、カムパネルラを過去世に転生させた」とするのが二枚貝説の解釈です。この解釈は、とくに二枚貝説だからということではなくても、ごく普通に読まれている銀河鉄道の夜(最終稿です)の作品単独で導出可能な解釈だと思います。すなわち、

 時籠ゆり=桃華の過去世への転生した姿

時籠ゆりが、桃華の記憶をもったまま、生前の桃華と多蕗と三人で同じ時間を生きる。桃華の死後、数年を経て、桃華の名前で運命日記を書く。あの運命日記の突拍子もない内容からすると、実名を使うほうが不自然です。そして、いつの間にか、なくなってしまった運命日記。5年後、運命日記と同じ行動を取る女子高生がいた。その女子高生は、桃華の妹。桃華の妹は運命日記を持っていた。

では、誰が、運命日記を苹果に渡したか。苹果11歳の誕生日、高校生の多蕗が桃華の日記を“たまたま見つけた”ので苹果に渡す。多蕗は他人の日記を読むような人間ではなさそうです。つまり、多蕗は運命日記の内容は知らないはずです。時籠(作者)→多蕗→苹果が運命日記の運命のラインということになります。

苹果にとっては運命(と信じたい)の相手から渡された運命日記ですから、なおさらのこと、信じてのめり込み縋りたいという動機となるのではないでしょうか。

追記

苹果「陽毬ちゃんを見てれば解る」

陽毬は実の妹ではないこと、それを陽毬も知っているということ。

 

つづく >輪るピングドラム 第9話