アニメ 輪るピングドラム 第6話

冠葉と夏目

エスカレーターから突き落とせば記憶が消せる訳ではではないことは自明です。また、あさみを殺そうとした訳でもなさそうです。記憶を消せればそれで良いように見えます。記憶を消せればいいのなら、あさみが目撃した人物のことは夏目にとってそれほど問題ではなかったのではないでしょうか。

あさみを突き落とす→ニュースで流れる→事件を知った冠葉が見舞いに来る。

あさみを突き落とした目的が、冠葉を誘い出して、記憶が消されたあさみを見せつけるためだった、としたらどうでしょうか。さらに、冠葉の目前で元カノ二人の記憶を消去して見せる。とすると、夏目の目的は、元カノ三人の記憶を消すことではなく、記憶消去が可能であることと、その手段を冠葉見せつけること、だったのではないでしょうか。つまり、冠葉への示威行動が目的なのではないかということです。とすると、高倉両親も同じように記憶を消されたのかもしれません。

あさみのニュースが事件の割にテレビで報道されるのは不自然でした。あの報道が夏目の仕掛けだとすれば腑に落ちます。すると、叔父が金策の相談に来たというのも夏目の仕掛けだった可能性があります。冠葉の能力を必要とする仕事があり、夏目からの“依頼”という形ではなく、冠葉からの仕事の“申し出”という形にして確実な遂行を期したのかもしれません。

夏目「嫌だわ、早くすり潰さないと」思わせぶりなセリフですが、ただの口癖かもしれません。



晶馬と苹果

これさえ完成させれば、あたしたちの運命はつながる。だから初夜。プロジェクトM。最大の試練だわ。

またしても晶馬と苹果のキス。晶馬、帰宅後、たいして意味のない生存戦略。「初夜だろうと初交尾だろうと変態女の望むことをさせてやれ・・・外道上等」。なぜ、大して中身のない生存戦略をおこなったのでしょうか。たぶん、その理由は、クリ姫(陽毬)には、冠葉の帰宅を待てないほどの衝動があったからだと思います。陽毬としては口にだせなくても、クリ姫としてならば“開放できる”衝動だからです。晶馬には、きゅっきゅっとしか聞こえない2号の報告が陽毬に与えた衝撃が、陽毬の中で即座に抑制不能なほどの衝動に変わった、ということだろうと推測します。もっとも、いきなり苹果が発情するのも理解不能かつ最大の謎です。

未来日記が桃華という姉が書いたものだということが判明しました。シュレディンガーの猫。多蕗との会話で、苹果が未来日記の意味を理解したというのは説得力にかけるように思いますし、11歳の時の決意を、延々、5年間も持ちづづけていたというのは無理がありそうですし、なにより、苹果が多蕗のまわりをウロウロしだしたのも最近のようです。なぜ、そんなにタイムラグがあったのかも不思議です。

苹果0歳、桃華の死。苹果5歳、夫婦喧嘩。苹果11歳、未来日記を理解。苹果16歳、ストーカー。ほぼ、5年ごとにイベントがあるようです。未来時間を閉じ込めた日記。あれは、玉手箱のメタファでしょうか。未来が真実となるとき、わたしの大切なものは「永遠」になるだろう。あれが玉手箱なら、大切なものは「永遠」に“失われる”のかもしれません。

苹果の誕生日は桃華の命日とおなじ。それがカレーの日。しかし、桃華はほんとうに実在したのでしょうか。苹果母は16歳(高2)の母としても若いくらいの年格好です。さらに上の、多蕗と同級生だった23~4歳の母というのは無理なように思えます。未来日記の作者としての存在が明らかになったにもかかわらず、多蕗と自転車で走るシーンでも桃華は影だけの存在でした。自転車で走るシーンは同時に「銀河鉄道の夜」のイメージを持っています。鳥と三角標のイメージです。いまさら、賢治のイメージを入れ込む意図はどのへんにあるのか疑問です。

苹果の目的は桃華になること。苹果のセリフ「運命は大きな輪っかの形」をしている。“輪るピングドラム”にあてはめると、ピングドラム=運命となりますが、そんな単純でいいのでしょうか。夏目のセリフ「運命の軌道はわたしたちの手の中にある」。

いやはや、シュレディンガーのペンギン。矛盾した存在が実存として特定の人間にだけ観測可能な世界。病院の2号が取り込まれたオブジェも複数の輪の組み合わせでした。このアニメ世界では運命はほんとうに輪の形をしていそうです。


あらたな黒ペンギンの登場。夏目も誰かに操られているのでしょうか。いるのなら、それはHのイニシャルを持つ女性ではないでしょうか。であるならば、もう一人、都合、三人目のHをイニシャルに持つ登場人物がいそうです。

 

つづく >輪るピングドラム 第7話