アニメ 輪るピングドラム 第20話

白と黒

追うと逃げるのは影。ペンギン、シャチ、パンダ、白黒の動物。KIGAの会のマークも白と黒。2つのピースに分割するという意志がマークの意味。

16年前のテロで、KIGAの会は一定の成果をあげていたらしい。眞悧の脇侍はシラセとソウヤ。人間とうより1号2号の雰囲気。眞悧にも、人間の男女の脇侍の存在があったはず。それが、今では、黒ウサギとその化身らしいシラセとソウヤ。16年前の成果とは、眞悧と眞悧の脇侍がターゲットになり、テロの結果として、眞悧と脇侍たちの分身たる黒ウサギだけが残った、ということなのではないか。



子供ブロイラー

 高倉「透明になる。彼らは何者にもなれない」
 晶馬「死ぬってこと?」
 高倉「…」

晶馬の問いかけに。無言の肯定を返す高倉父。ピンドラの作品世界には子供ブロイラーが実在していた。そこでは、たくさんの子供が透明な存在にされている。そして、高倉両親の目的は、子供ブロイラーが実在する世界を正すこと。

ガラス様のかけらは透明な存在になった子供たちの溶け残った心。金子みすずは、“凍った心が溶けるとみんな涙になる(「林檎畑」)”といった。クリスタルの破片は砕かれた心。砕かれるのは涙が凍った心。すなわち、降り落ちているのは涙のかけら。晶馬が追いかけるゴミ収集車。まわりに降り落ちる雪は、降り落ちるクリスタルの破片の伏線。プリンス・オブ・クリスタル。涙が凍った“氷姫”と解釈すべきか。

なぜ、“子供ブロイラー”なるものが存在するのか、なぜ、“子供”でなければならないのか。

高倉両親が指名手配されたとき、陽毬は寿命を意味する苹果を取り出していました。KIGAの会のアジトには、真沙子が使った“忘れ玉”が大量にありました。そして、マリオの命の苹果から忘れ玉を作っていたのが眞悧です。

大人や老人に較べて子供は寿命が長い=命の苹果をたくさん持っている。命の苹果を大量生産する工場が子供ブロイラー。捨てた子供の親は、命の苹果の加工品の一種である忘れ玉を使われて捨てた子供がいた事実を忘れさせられてしまう。おそらく、忘れ玉の使用は、その親の子供が透明な存在にされた後に行われる。そうでないと、桃果が多蕗を救った後の育成環境も消え去っていて、多蕗は途方に暮れていたはず。


陽毬の初恋

アンデルセン「すずの兵隊」の話は陽毬の置かれた状況をたとえるには、むしろ甘やか。

おなじように心臓だけが溶け残る、ワイルド「幸福の王子」の方がふさわしい。幸福の王子の心臓はツバメが死んだことを知ったとき割れてしまい、その後、王子の体は溶かされてしまう。そして、神が天使にこの世で最も美しいものをふたつもってこいと命ずる。天使は、ツバメの死骸と溶け残った心臓を持ってくる。

それなりの救いもある。幸福の王子を陽毬に、ツバメをSUNちゃんに重ねることができる。にもかからわず、脚本は「すずの兵隊」を選ぶ。その選択の意味するところはなにか。

陽毬の独白。「溶け残ったすずの兵隊の心臓みたいに…。だから幸せ」。ニ色のマフラー。陽毬は晶馬に声をかけられて嬉しかった。つまり、あの瞬間が“恋する時間”だった、ということ。そして、おそらくは、年齢的に“陽毬の初恋”だったという意味。

リンゴ入りカレー。眞悧との会話で、恋の成就は果実に例えられていた。たしかにリンゴを“すりつぶし”ていたが、特段、“苹果をすりつぶす”という意味にとらわれずに、すなおに“恋の果実”と捉えてもいい。

19話の陽毬は、居場所がないと感じていた。けれども、20話で晶馬との出会いを思い出し、陽毬は晶馬に選ばれていた。陽毬は死ななくていい(“選ばれないことは死ぬことなの”の逆)わけだから、陽毬には、ずっと前から居場所があって、その居場所にいたことの確認ができた。

  陽毬「晶ちゃんに選ばれたかった(生きたかった)」

KIGAマークのあるリンゴは運命の果実。KIGAマークのないリンゴは“恋の果実”の暗喩かも。

余談になるが、岩井作品「love letter」では、天使たちが神に、ずごいものを見つけちゃったと告げ、図書カードを手渡す。図書カートの表にはツバメの名前が、裏には溶け残った恋心が書かれていた。



日の神

“ひまり”は“ひだまり”の“ひまり”。ひだまり=日の光があたる所=月。SUNちゃんは三毛猫だからメス。陽毬(月の女神)とペアになるのは、マリオではなく、桃果(日の女神)なのかもしれない。すなわち、次回ラストの引きは桃果復活!か。

 

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アニメ 輪るピングドラム 第19話

消えた多蕗。

突如、出現した高倉両親。両親と冠葉の会話に中身はない。おそらく、あの両親は偽物。前回の多蕗黒化の意味を、冠葉がアルバイトしている組織が疑念を持った結果であろうと推測する。多蕗が高倉両親の消息を知りたがっていたのは、多蕗個人の思惑によるものなのか、あるいは、他の組織に操られたことなのか、という疑念。多蕗が消えたとうことは、冠葉が、常時、多蕗の監視下にある可能性が高い。逆に多蕗をニセの高倉両親で誘い出し逆監視できれば、多蕗の本当の目的を知ることができる。

冠葉のバイトの内容は、はからずも、17話で陽毬が言った“迷彩色”に絡んでいるはず。陽毬の表層は冠葉のバイトの実態を知らなくとも、陽毬の深層(クリ姫)は1号から報告を受けて知っているはず。“迷彩色”は、陽毬の深層の知識が言わせた言葉ではないのか。

ゆりにとって多蕗の存在は、本来、桃華の想い人。桃華が日記に記した多蕗への想いを、同時にゆりに語っていたろうか。おろらく語っていたのかもしれない。ゆりの行動は苹果の行動と被るものだった。苹果は日記の記述を実現しようと行動していた。であれば、ゆりの行動は、プロジェクトMまでも実現していたはず。しかし、ゆりは浮気に走っている。家のソファーに互いに座るゆりと多蕗。二人の間には広く開いた空間。多蕗のグラスのそばに桃華用のグラス。

ゆりも、苹果の計画をなぞることで桃華になりたかったのかもしれない。嘘の桃華になって、嘘がやがて真実になれば、それは、ほんとうの桃華である。ゆりがほんとうの桃華になれば、そして、完全な日記な日記があれば、そして乗り換えの呪文が判りさえすれば、ゆりが日記と呪文を使って桃華を取り戻せる。そのような論理か。



陽毬の居場所


晶馬の横に苹果。苹果は強引だ。晶馬にはぶりっ子は効かないけれど力ずくは効果がある。強引にそばに寄っても今の晶馬は嫌がらない。そんなふたりの姿が、陽毬には晶馬の横に苹果の居場所ができたように見えてしまう。逆に、陽毬の場所がなくなってしまったように思えてします。テレビで歌うダブルH。そこにも陽毬の居場所はあるはずもない。

 「私は死ぬのね。死なないよ。うそ。どんな言葉を言って欲しいのかな」

死んでしまうのなら居場所はいらない。けれども眞悧先生は、死なないと言う。死なないのなら居場所が必要。家族、学校、仕事、恋愛、…。




真沙子と眞悧の対峙

呪文に意味はない。眞悧は魔法使い。眞悧は、この間違った世界を正したい。親たちが叶えられなかった夢を実現してもらいたい。眞悧は日記を燃やせない。眞悧は日記があるとゲームに勝てない。

今の世界は間違った世界。ということは、16年前、高倉父は世界をピースすることに成功していたのだろうか。“世界をピースする”とは、日の神(眞悧)が月の世界も支配している世界を、2つのピース、この作品の文脈では昼の世界と夜の世界の2つの世界に戻すこと。それが、今ふたたび、闇ウサギに支配されている。夜の女神はいない。やはり、16年前、高倉父は失敗したのではないだろうか。つまり、今の世界については眞悧は嘘をついているのではないか。この間違った世界を正したい=親たちが叶えられなかった夢、なのではないか。



陽毬の記憶

真沙子が陽毬に本当の妹ではないと告げる。思い出し玉。“私(陽毬)は何者か”という自問。子供ブロイラー。回想:“世界”から捨てられた日。陽毬は“親”にではなく“世界”に捨てられた。世界の意味は?氷の世界→南極→ペンギンが棲む世界という連想。必ずしも地理的な意味での南極ではないのかもしれない。。

シュレッダーへと続くベルトコンベア。陽毬「何者にもなれなかった。でも、これ(ニ色のマフラー)は持っていけるよね」。

ニ色のマフラーの意味。ニ色は昼と夜の暗喩。それは月の女神になりうる“資格”のことではないのか。であれば、女神(神)になれない者が“何者にもなれない者”の意味になる。陽毬は有資格者である。けれども、あの時点で、女神にはなれていない。

なぜ、女神になれていないのか。女神になるためには魔法が必要。魔法の呪文が必要。魔法の果実が必要。そして、魔法使いが必要。魔法使いが運命の相手。晶馬が魔法使いだった。晶馬が差し出す魔法の果実。しかし、ふたりは魔法の果実を失った。それが“ピングドラム”なのだろうか。そして、ピングドラム、あるは、ピングドラムへと導く鍵は、いつしか苹果の元へ。

  クリ姫「運命日記とやらをそこの小僧に渡しやがれ」

ひょっとして、あの時、苹果が晶馬に日記を渡していたら、晶馬が「セイゾンセンリャクシマショウカ」と唱えていたら、ピンドラは第6話で完結していたのかもしれない。


追記:陽毬のウサギの靴下が2号と3号。1号はマリオからの借り物で正体はカラス

 

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アニメ 輪るピングドラム 第18話

陽毬はどうやって助かったか

陽毬の落下、地上に落下するゴンドラ、床に座り込む冠葉、陽毬を抱える多蕗、と、あたかも、一瞬のように演出されていましたが、あれが十数分間の出来事であれば、可能でなくもないと思います。ゴンドラが落下したとき、地上にいた晶馬が、冠葉たちがいる高層フロアまで階段を駆け上がってくる時間を勘案するとかなりの時間があったはずですから。

また、1号は手にダメージを受けていましたが、3号は無傷で毛糸玉を巻いていました。“毛糸玉を巻いていた”というのが多蕗による陽毬救出方法を暗示しているのかもしれません。たとえば、陽毬には元々命綱が付けれられていた、と考えればいいのかもしれません。もっとも、陽毬が地上まで落下していたとしても、軽傷ですんだはずです。なぜなら、ダメージは3号がほとんど受け止める、そうゆう役割ですしそうゆう設定でしょうから。

ただ、陽毬は、病院に戻るのでしょうか。病院を戦場に選ぶのでしょうか。


桃華の記憶

子供ブロイラーで、多蕗がシュレッダーに落ちそうになる手を桃華が支えた。あの記憶は、本当に、16年前にあったそのままなのでしょうか。いらなくなった子供の集まるところ。透明な存在。きわめて観念的です。

一つの可能性として、記憶が、冠葉が滑車のワイアーにぶら下がったあの瞬間、多蕗と桃華の出会いの記憶として多蕗に埋め込まれたものだとしたらどうでしょう。多蕗が「桃華」とつぶやいた瞬間に桃華が介入してきたと解釈できないでしょうか。

つまり、闇ウサギによって黒化した多蕗を、闇ウサギから解放するために、まさに、あの瞬間に桃華が介入してきたとは考えられないでしょうか。



ゆりの平手打ち

地上に降り立った多蕗に「利用したわね」というゆり。「君こそ二人を呼び出して何をするつもだったんだい」ゆりが苹果と陽毬を誘い出したことを知っていました。ということは、苹果やゆりがいたヨザワヤのフロアに多蕗もいたということ。苹果と陽毬の会話から、ゆりが二人と待ち合わせの約束をしたことをを知る。ゆりに電話をするが、ゆりは出ない。ゆりの様子がおかしいことを直感。いよいよ、ゆりが高倉の家族に危害を加えそうな様子。

多蕗が口にした“偽の家族”という言葉に瞬時に反応して多蕗を平手打ちするゆり。たぶん、あの言葉は、ゆりにとって紛れも無く真実で、聞きたくなかった言葉で、打ち消したかった言葉。しかし、打ち消すことはできず、“さよなら”という別離の言葉が答として返ってくる。

利用していたのはゆり。ただし、高倉憎さで、暴走しようとする自分を、多蕗にしがみつくことで抑えこんでいた。それが“利用”という言葉の意味。

多蕗には暴走するゆりを止める手立てが、先に自らが行動することしかなかった。多蕗は、ゆりの言葉には言葉で受け止めていた。多蕗の言葉は本音。しかし、ついに、ゆりは行動に移そうとしている。多蕗はゆりに先んじて行動に移る。しかし、その決断自体、闇ウサギに使嗾されたもの。

多蕗はゆりがすがってきたことを悟っていたはず。その意味も知っていたはず。ゆりに苹果は晶馬が好きだと聞かされ、知っていると答える。多蕗は、ヒメホマレ事件での苹果のひとすじの涙の意味を正確に見透していた。したがって、ケロケロは演技。多蕗は演技派。おまけで、ゆりは武闘派(舞踏派w)

ゆりを受け止め、身をもってゆりの行動を止める。誰かを護るための自傷行為。それが多蕗のやさしさ。誰かを護るための代償としての自傷。それは桃華のやさしさでもある。

  あなたの心を聞いていた。あなたが大好きよ、私のために生きて、と桃華。

おそらく、桃華は、多蕗が手を潰した事情(たぶん、語られたまま見たままではない)を見抜いていたと思われる。

ケージの中の黒い鳥。母から与えられた黒い鳥は多蕗の心情そのもの。いつしか、ケージに閉じ込められるようになった黒い鳥。そんな黒い鳥をケージから解放したのは桃華。黒い鳥は、白い鳥に変わって飛んでゆく。白い鳥も多蕗そのもの。桃華といた時間の中の飛翔する多蕗自身。桃華が消えたあと、鳥を探すようになる多蕗。なぜなら、鳥が飛び立つ所には桃華がいるかもしれないから。

  「苹果ちゃん、僕のようになっちゃダメだ」

自らケージの中に入る多蕗。反面教師。なぜ、多蕗はわざわざ苹果にあんなことを言いすてたのか。

  “罰は、いちばん理不尽じゃないとね”

ラスボスは苹果なのか?

 

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アニメ 輪るピングドラム 第17話

【冠葉と陽毬】

とりあえず、冠葉と真沙子が実の双子なんじゃないのかなぁ。真沙子父の手紙の“親子四人”には冠葉が入っていそうな気がします。



【猶予なし】

  クリ姫「もはや一刻の猶予もならぬ。ピングドラムを手に入れるのだ」

なぜ、猶予がないのでしょうか。前回、マリオが殺されそうになったことを言っているのだと思います。クリ姫はマリオの危機をどうやって知ったのでしょう。可能性があるとすれば、連雀をイリュージョンに取り込んだことと、連雀がイルージョンのこと覚えていないこと。つまり、連雀を通じて真沙子とマリオの情勢を掴む何らかの仕掛けをしたであろうこと。そして、それによってマリオの命が危険に晒されていることを知ったためと思われます。

さらに、眞悧の“戦争”発言は、クリ姫がマリオの危険を察知したことで、クリ姫が対抗する行動に出ることを察知した上での発言だと思われます。つまり、クリ姫の思考は、すでに眞悧に見透かされています。とうぜん、クリ姫もそのことを予見しているはず。それでも行動開始するクリ姫。たこ焼きパーティは高倉家最後の団欒だったのではないでしょうか。そんなクリ姫が、いちいち眞悧に外出許可なぞ求める必要がありましょうか。外出許可のこと、時間があるといったこと、すべて陽毬の嘘だと思います。



【ゆりと多蕗のシーン」

高倉兄妹を許すことはできないというゆり。苹果は桃果じゃない、実行犯と家族は別、という多蕗。桃果は死んでなんかいないわ。そうだねと多蕗が答える。

  ゆり「寒いわこの部屋。カーテンが必要ね」

窓から見える東京タワーを隠したいという心理。桃果を取り戻すという決意と、取り戻せないという常識とのジレンマ。ゆりが隠そうとするのは、ゆりの行動を掣肘する“桃果は死んだ”という多蕗の認識。多蕗は白いシャツを着ている。多蕗の言葉は本音。

追記:これから罪を犯すゆりの姿を東京タワー(桃華)から隠すため、とした方がよさそうです。



【日記の作者】

日記の作者を考え直さなければならない時がきたようです。

  ゆり「高倉は多くの人の命を奪ったのよ。桃果はそれを止めようとして」

なぜ、ゆりは桃華の最後の行動の目的を知っているのでしょうか。そして、なぜ、ゆりは桃華を取り戻せると考えるのでしょうか。たぶん、日記の最後から読み取ったのだと思います。しかし、桃華は“乗り換え”ようとして失敗した。テロは実行に移され、日記は残され、桃華は死んだ。

桃華が死んだのは確かなことだと思います。なぜなら、空の孔分室に出現しているからです。また、生き返った可能性が非常に高いこともほぼ確実です。なぜなら、陽毬と同様に、畳まれてゆく床から、ペンギン帽をかぶった靴下の女の子が落ちて行っていっているからです。したがって、少なくとも桃華の肉体は、この世のどこかで生存状態にあるはずです。

  「赤坂見附駅、エレベータ、赤いくつの女の子」

冠葉の元カノが突き落とされたのはエスカレータでした。ここは演出ミスではなかったのでしょう。あの日記にエレベータと書かれた時点では、赤坂見附駅には、エスカレータはなくエレベータがあった。ここは“景色が変わった”と考えるべきかと考えます。きっと、ゆりは、おなじような記述なり景色の違いに気がついたのだと思います。



【外出する陽毬】

苹果を引き連れて買い物にゆく陽毬。眞悧に外出許可をもらったというのは嘘です。帰らなければ、眞悧が陽毬に罰を与えるであろうことも計算の内。

ゆりからの電話。苹果が陽毬と一緒にいることを告げる。ゆりは合流を約し、車に戻りボウガンを手にする。すなわち、ゆりが苹果に電話した目的は苹果に陽毬を誘い出させること。そしてボウガンの狙いは、陽毬。ゆりは陽毬を殺すことが桃華の復活に繋がると信じているようです。なぜ。そんな緊迫した場面で、タイミングよく真沙子登場。バトル開始。ゆりは足止めされる。

珈琲店で待つ苹果と陽毬のもとに現れたのは多蕗。苹果と陽毬を誘い、建設中のゴンドラに乗り込む

  多蕗「ぼくの生きている意味。これから見せてあげる。
     決めたんだ。
     今日ぼくは、高倉家の人間に罰を与えるよ」

多蕗は、ゆりに嘘を言っていたのでしょうか。そうは思えません。もし、本当に多蕗が黒ければ、これまでには何度でもチャンスはありました。今日ここにいたって豹変したのです。多蕗の黒化を、陽毬に“眞悧の罰”を与えるためであると考えると辻褄があいます。

人の心の裡には、どんな人間であろうと良心と悪心が同居しています。“罰”を与える手段が人間の悪心を増幅することによって行われるのであれば、どんな良い人間であろうとも、悪人に豹変せざるをえません。16年前の高倉両親も同じだったのではないのでしょうか。

しかし、救いがないわけではないと思います。増幅された暗黒面に押しのけられた良心はどうなるのでしょうか。おそらく、シグナルを上げるのだと思います。“救けて”と。眞悧は“救けて”という声が聞こえる特別な存在。桃華も同様です。桃華が、テロを阻止しようとしたのは、高倉両親たち実行犯の追いやられた良心が発する“救けて”という声を聞いたからだと思います。

黒いシャツを着た多蕗。ドヤ顔の陽毬。

多蕗の黒化は陽毬(クリ姫)の計算の内だったようです。そして、多蕗の良心は既に“救けて”とシグナルを上げつづけているはずです。では、多蕗のシグナルを受けるは誰になるのでしょうか。眞悧、桃華、マリオ。過去に、多蕗のシグナルを受けとめた実績があるのは桃華だと思われます。桃華がもっともシンクロしやすいはずです。同じように、ゆりの良心もシグナルを上げるのかもしれません。

  眞悧「戦争だよ、戦争、もうすぐ戦争が始まる」

戦争を仕掛けたのは陽毬(クリ姫)です。連れている護衛は武闘派の苹果です。おそらく陽毬が呼び出したのでしょう。

 

つづく >輪るピングドラム 第18話

 

アニメ 輪るピングドラム 第16話

ギャグ回と見せかけて、眞悧の重要な変心を示す回のようです。

【ニセ運命日記】

歌を再生したあと燃え上がって自己破壊を図る日記。そんな物、ゆりはどこから入手したんでしょう。きっと、ピンドラの世界は、ああいった物を、わりと簡単に入手できる世界なのでしょう。きっと、そうです。特定の記憶だけ選択的に消去したり、地球儀の自転軸もぜんぜん違う世界なのですから。

連雀という新キャラが登場しました。第10話で苹果が落とした日記の前半分を拾ったのは連雀だったのでしょう。晶馬が意識を取り戻した時、病室の入って廊下側の左側がカーテンで隠されており、1号がブラを拾って出て来ました。たぶん、あれは連雀の物だったのではないでしょうか。



【真沙子と祖父】

池の中の二匹の緋鯉は、真沙子とマリオでしょうか。

“家族四人”も気になりますが、“指折り数えて待っている”というところでが、ある期間、拘束されているといったニュアンスに聞こえました。ただし、最後に冠葉に、「あなたも利用されて殺される」といってましたので、真沙子の父はすでに亡くなっているおそれがあります。

繰り返される真沙子の祖父を暗殺する夢。裏返してみると、真沙子自身の生殺与奪を祖父に握られているというストレスからの恐怖、ということも考えられます。祖父がいる邸宅とそこから出ることのできない真沙子姉弟というのが“池の中の二匹の緋鯉”の暗示するところでしょう。

また、祖父が誰かに憑依しているとすると、それは、真沙子の方にではないでしょうか。少なくない相続税を納付してなお祖父の事業を継承・維持し祖父と同じように君臨しているというのは、真沙子自身も相当のやり手といえると思います。そして、真沙子=祖父の根拠となりえると思います。

それでも、祖父がマリオに乗り移って見えた、とのは、祖父というより別な誰かの仕業のように思えます。タイミングよく眞悧が電話を掛けてきたことといい、真沙子が気がついた時、窓の下にいたことといい、あの時点でのマリオは、眞悧に操られていたと捉えるほうが自然ではないでしょうか。

つまり、眞悧の本来の目的はマリオをフグ毒で死なすこと。しかし、真沙子がふぐ刺しを全部平らげてしまったのは眞悧の誤算。そして、致死量のフグ毒だったはずなのに真沙子が助かったのは、エスメラルダと毒を分かち合ったから。うん、辻褄が合っています。

いまさらですが。両親の不在、親からのストレスというのが共通したモチーフにあるようです。高倉兄妹も真沙子姉弟もゆりもおそらく多蕗も、そして、苹果も両親が離婚して父が不在。



【眞悧】

眞悧は、陽毬には受けがよろしい。WHにマフラーを届けたことがかなり効いています。眞悧は陽毬を懐柔しようとしているように見受けられます。なぜ?それは、陽毬が夜の女神だから。眞悧は、いつ、そのことに気づいたのでしょうか。

それは、陽毬が空の孔分室に現れたときだと思います。それまでは、陽毬は眞悧にとって罰を与える対象でしかなく。毎日、ひとつづつ陽毬の“命の苹果”を取り出していた。でも、空の孔分室に陽毬が現れたことで、その正体を知る。陽毬の正体は、桃果とは違い、眞悧と対になる(なりえる)夜の女神だと悟った。

イルージョンの列車の中。真沙子が使っていた弾丸は、眞悧によって苹果を作り替えたもののようです。ドキッとしたのが、マリオが眞悧に苹果を渡すところ。マリオの“苹果”とはマリオの“命”ですから。

マリヲは自分の命を取り出して眞悧に渡している。フグ毒事件といい、眞悧にとって、マリオは、もはや、いつでも命を奪ってもいい存在、いつ死んでもいい存在であるようです。なぜ?

  ≠蜘Α崙任毒のない部分まで移ってしまう危険性があるんだ」
  (中略)
  ≒蜘Α屬海寮こΔ隆岼磴い鮴気梗圓冒ばれたんだ。」
  真沙子「この世界が間違えてる?」
  b蜘Α屬世辰瞳の弟にはなんの罪もない」
  真沙子「そうよ、あなたが救けてくれるんでしょ。そういう約束だったわ」
  も蜘Α峙澆韻討△欧襪茵7も選ばれたものとして行動を共にすればね」
  真沙子「何をしようとしているの?」
  モ蜘Α崟こΔ鮗茲衞瓩垢里機

い今回ですでに嘘です。であれば△皚イ皹海任呂覆い任靴腓Δ。つまり、眞悧にとって、この世界は正す必要はないし世界を取り戻す必要もない。も嘘だとすると、マリオの罪とは何?

マリオの罪とは,世隼廚い泙后マリオの存在は眞悧にとって“毒”。マリオを生かしておけば“毒のない部分まで移ってしまう”だからその危険性を排除したい。

ああ、マリオの命が危ない。

  

つづく >輪るピングドラム 第17話

 

アニメ 輪るピングドラム 第15話

【晶馬への電話】

2号good jobというべきでしょうか。ペンギンは、いってみれば分身ですから、スマートフォンリテラシーも晶馬と分かち合っていて当然です。そして、ほとんど手が付けられていない料理がそこにあれば、2号が出没してもおかしくない状況です。それにしても、2号が晶馬にダイヤルして薬を盛られて朦朧としている苹果を電話口に出すという芸当は、すごい気のききようだと思います。さすがはアニメです。

ただ、“商店街の福引”ってのはベタだと思います。が、日本のアニメで“商店街の福引”はベタだベタベタだと指摘しても、そもそもが、“商店街の福引”は、サービスカットを導入するためにさまざまな作品に頻繁に取り入れられており、もはや、枕詞のようなベタですので、サービスカットがあったと言ってもいいと思うので、この類のベタは許容せざるを得ないでしょう。

さて、今回、2号はゴキブリを仕留め損ねました。ゴキブリを一瞬の舌芸で食べてしまったのはカエルです。2号(晶馬)=ムシ(女子)を寄せ付けない=草食系。カエル(苹果)=ムシ(男子)を一瞬の早業で食べてしまう=肉食系。そして、待ってたんだぞ(ぶりっ子)の苹果に晶馬は耐えましたが、ヤンデレ化した苹果には一瞬にして落とされてしまいました。たぶん、この先、晶馬は恐妻家になる運命が待ち受けています。

百合が晶馬を「あら、襲っちゃえばいいのに」というのには幾つかの複合した意味があると思います。が、おそらく、再びの百合行為を暗示しているようにも思えます。




【百合の記憶】

百合父がノミを振るっていた対象は、まわりの石像だと思います。実際、足がゴトリと落ちたカットがありました。苹果の足や腕に包帯があったのは本当に傷があったからではではないと思います。普通に歩いて登校していましたし、血が流れている描写もありませんでした。実際に、百合父が消えたとき、東京タワーを見上げる百合の体に傷は見当たりませんでした。百合父は、代償行為として石にノミを振るい、桃華には見せかけの包帯をしていた、ままごとのようにだと思います。ただ、フィレンツェのノミだけは特別の用途に使うはずだったのかもしれません。

ダビデ像タワーの周りをヘリコプターがバタバタと騒音をあげて五月蝿く周回していました。“五月蝿い”という語からの連想ですが、あのヘリコプターは“蝿”のメタファではないでしょうか。もしもヘリコプターのメタファが“蝿”であれば、蝿→屍体という連想も可能かと思います。

ひょっとすると、百合父は死臭をまとっていたのではないでしょうか。死臭がする百合父、そして百合父が百合母に向ける憎悪。百合母は不在。これらの状況からは“ネクロフィリア”という言葉が浮かんできます。

百合母は百合を産んで醜くなった、そして、百合も醜い、と百合父はなじりますが、それは、百合が小学校2年生の時の出来事です。百合が生まれた時から、百合父が母娘を虐待していたようには感じられません。百合には父親への愛情と信頼があるように感じられました。それは、逆にいえば、百合父が百合に愛情を注いていたからだと思います。しかし、ある日、突然、母娘を醜く思うようになった。考えられるのは、たとえば、百合が百合父の実子ではないことが最近になって判明した、とかです。

愛情と裏返しの憎悪。百合父が百合母娘に同じくらいの愛情と同じくらいの憎悪を同時に抱いていたとしたら、そして、百合母にそっくりの娘。百合母の不在の期間。死臭。毎夜のノミを使った改造行為。届いたばかりのフィレンツェのノミ。

  桃果「だって、このままだと百合は死んでしまう」

百合父は、フィレンツェのノミを使うと百合が百合父に愛される存在になると言う。死んだ百合=百合父に愛される存在。百合を待っていたのは百合母と同じ運命だったのでしょうか。

3月20日の事件の時のペリコプターは人死が出たことの暗喩だったのかもしれません。




【真沙子と百合】

真沙子は水着姿でした。これは、百合のプロファイルを調べて、陸上の逃走経路は取れないと判断した結果でしょう。

病院で晶馬を人質に取ったとき、真沙子が対冠葉、百合が対苹果、といういう役割で二人ツルンでいると思ってました。また、前回、真沙子が“女狐”狩りという言葉を使いましたので、“女狐”という言葉の“騙す・化かす”というニュアンスから、真沙子が百合に騙されたと感じているように思いました。ですので、中居の真沙子と百合の会話は、百合が“中居さん”と呼びかけたところから、皮肉がこもっていると思っていました。しかし、露天風呂でのバトル前、

  百合「わかったわよ。残り半分の日記はあなたが持っているのね」

あれれ、日記の半分は、百合が拾って真沙子に渡したんじゃないみたいです。もし、このセリフさえなければ、今回、百合が奪われた日記の半分は、真沙子が持っている日記の半分とぴったり一致したはず。なぜなら、病院で入手して真沙子に渡した日記の前半分は、当然、ニセ日記の前半分だったはずですから。でも、そうではなかったようです。



【桃果という存在】

運命日記=乗り換え、神様にお願いする。

桃果は、百合父とダビデ像タワーを消す代償が絆創膏1個程度だと認識していたようです。つまり、桃果には“乗り換えた”経験がそれほどあった訳ではなさそうです。ウサギを死の運命から救った。ほぼ、それだけの経験のようです。

日記を記していて、ある日、ウサギが死んだ。ウサギが死なないように運命を書き換えた。偶然か誰かが介在したのか。桃果は神様にお願いしたと言ってますから、“神様”に相当する存在の介在があったものと思われます。神様≠眞悧は自明です。眞悧が桃果の存在を知ったのは、桃果が一旦死んで空の孔分室に入り込んだ時です。

また、桃果の神様の能力は、運命を乗り換えること。眞悧の能力は、命の与奪。まだ、あたらしいキャラが登場するのでしょうか。それとも、この“神様”は既出のキャラの誰かなのでしょうか。はたまた、陽毬(クリ姫)と同じように、桃果の深層にいる存在なのでしょうか。多蕗-桃果-百合を三位一体と考えれば、桃果の神様は桃果の深層に居そうです。

あと気になるのが、小学生の百合が桃果の日記を手に取ろうとしたとき、桃果が制止したこと。しかし、その日記を苹果も百合も、ひょっとしたら真沙子も触れてもなんともない。これは3つの可能性をもっています。

  (1) 日記がほんものでない
  (2) 三人とも従僕なので触れても何も起こらない
  (3) 本来、何も起こらない

苹果も、百合も、真沙子も、常人以上の身体能力の持ち主だということははっきりしました。おそらく(1)ではなく。(2)が理由ではないかとも考えましたが、真沙子が持っている日記の前半が第三者の手を経ているのであれば、(3)になります。

百合の認識では、桃果は死んでいない。消えただけ。なぜなら、世界の景色が変わった、と言っています。ウサギのこと、百合のこと、日記に書いてあったのでしょうか。書いてあったのなら、日記は桃果が書いたことになりますが、それは先々のお楽しみ、なの?

 

つづく >輪るピングドラム 第16話

 

アニメ 輪るピングドラム 第14話

いやはや、今回は、演出回だったと思います


【苹果に冷たい晶馬】

  晶馬「これ以上、表面的な言葉で傷つけあうことに何の意味があるんだ」

晶馬の願望、本性、本質、心情を2号の行動で読み解けば、“食いしん坊”と“女嫌い”。2号がことさらゴキブリを退治しようとするのは、おそらく、ゴキブリをムシ(女)に見立ててのことだろうと思います。

基本的に女を寄せ付けまいと誓っている晶馬は、ほかの女子にするように、苹果も冷たく突き放す。でも、これは苹果のことを思ってのことだろうと思います。晶馬はすでに十分に傷だらけなはずだからです。晶馬たちと行動を共にすることで苹果も傷つくと予見できるから、背中の苹果の涙声に顔には出さずに耐える晶馬だったと思います。




【眞悧とマフラー】

鷲尾医師がいなくなり、眞悧が医師として冠葉に応対する。陽毬が捨てたマフラーをした眞悧が鳥のポーズ。マフラーを翼に見立てているかのようです。他の患者には鷲尾医師が以前のまま応対しているのかも。

眞悧がシラセ・ソウヤの二人を従えている構図を「銀河鉄道の夜」で読み解けば、来迎三尊=三位一体説が相当すると思います。そして来迎三尊が大一小二の構図で現れるのは「やまなし」で、カニの親子の大一小二の構図です。

日の神と月の女神がそれぞれの従者と三位一体の構図をもっているのであれば、以下の構図が浮かび上がってきます。

  シラセ-眞悧-ソウヤ
  多蕗-桃果-ゆり
  真沙子-マリオ-??
  冠葉-陽毬-晶馬




【落胆の真沙子】

冠葉の行動を非難する真沙子。冠葉の仕事とは、犯罪すれすれの仕事なのでしょうか。両親と同じようにフレームアップの罠が待っていることがほとんど自明なのかもしれません。

しかし、そもそも、なぜ、真沙子は冠葉に執着するのでしょうか。愛情のためだけとは考えづらいくらい執着していると感じます。

  (左、床に手をついた夏芽、右、冠葉)
  夏芽「どうしても私じゃだめってことね」
  冠葉「いい加減にしろよ」
  夏芽「よろしくてよ、私は私のやり方で幸せをつかむから
     マリオさんは必ずわたくしが救ってみせる」

左(下手)、右(上手)というのが演出の基本です。下手には弱い存在を、上手には強い存在を置く。このシーンの真沙子は、これまでで最も弱々しい真沙子です。

この演出を加味して解釈すれば、まるで、マリオを救うためには本当であれば冠葉の存在も絶対に必要で、冠葉と真沙子の二人でなければマリオを救えない、といっているかのように聞こえます。

であれば、冠葉を陽毬と繋げるのではなく、マリオと繋いでみると、上の三位一体構造は、次のように変化します

  シラセ-眞悧-ソウヤ
  多蕗-桃果-ゆり
  冠葉-マリオ-真沙子
  晶馬-陽毬-??

もしも、この構図が成立するとするならば、??に相当するのは女性がふさわしいはずです。すると、ゆりが言う“運命の環”で陽毬と繋がれているのは、実は、冠葉ではなくて、苹果なのかもしれません。

  シラセ-眞悧-ソウヤ
  多蕗-桃果-ゆり
  冠葉-マリオ-真沙子
  晶馬-陽毬-苹果

これこそ、天球儀の赤く発行する4つの珠の意味するところなのではないでしょうか。





【嘘つき姫】

白鳥、ジャガーの車窓から見える白い鳥。白い鳥はゆりの願望。ゆりの願望は、同じように多蕗の願望。彼らの潜在意識は、自分たちが黒い鳥(カラス)、すなわち桃果=日の神だと感じているのかも。


ノーマルモード
  ゆり「この世界は残酷なルールに支配されている。
     求められる者と求められない者。
     そのふたつを分けるラインが私には見える。
     だからこそ私はファビュラスに成功した。」

(マニュアルモード→嘘つきモード)
  ゆり「今や私は特別な存在。
     もう誰も容易には私に近付くことはできない。
     私の心にはけっして誰も触れさせない。
     私は過去を捨てた! 」

スキール音→停止→本音モード)
  ゆり「嘘よ!この世界はみんな嘘で出来てる。
     未来永劫、誰も本当の私を求めたりなんかしない。
     あなただけだった。あなただけが私を美しいと言ってくれた。
     会いたい。今すぐあなたに。 きっと会えるわよね。
     だって約束したじゃない。私たちの繋がりは永遠だって。」



苹果が天下の公道で、思いっきり落ち込んでいるところにゆりが登場。いまだに苹果はゆりの監視下にあるようです。

ノーマルモード
  ゆり「恋をしてるのね、かわいそうに。
     でも初恋って実らないものよ。あたしにもかつてそういう人がいたわ。
     だから苹果ちゃんのつらい気持ちとってもよくわかるの」

(マニュアルモード→嘘つきモード)
  ゆり「そんなときは、女同士ぱぁっとファビュラスするのが一番なのよ」

人鳥荘。受付「いつもご贔屓にありがとうございます」。壁面の魚拓の数々。魚拓=釣果の意味。今宵、ゆりは釣りをする。あるいは、人面鳥(Haapi)が獲物となる人の娘を篭絡する。いつものように成功は期している。

露天風呂。苹果を薄衣へと誘導する。苹果「姉はどんな子でしたか」

(燃え上がる篝火→本音モード)
  ゆり「世界は愛すべき者に充ちている。そう、このあたしも含めて。
     桃果は私の世界を変えてくれた。
     彼女といれば、どんな物も輝いて見えてた。
     そうこの私も含めて。
     姉妹って不思議ね。苹果ちゃん、あなたは桃果と同じ香りがする」

(燃え上がる篝火→嘘つきモード)
  ゆり「(多蕗と結婚するのは)愛しているから。
     嘘、ホントはあたしたち仮面夫婦なの。なんてね。


(スマッシュ→本音モード)
  ゆり「本当は、わたしたち運命の輪でつながれているの」




【運命日記】

  ゆり「桃果は死んでなんかいない。
     ようやくこの時がきたわ。
     すべては桃果の日記に記されていたとおり」

温泉旅館の浴衣の胸元から取り出すには日記はかさばり過ぎです。不自然だと思います。ここは、“ジョバンニの切符”のメタファなのだと思います。

  ジョバンニは、すっかりあわててしまって、もしか上着のボケットにでも、
  入っていゐたかと思いながら、手を入れて見ましたら、なにかおおきなた
  たんだ紙切れににあたりました。こんなものが入ってゐたらうかと思って、
  急いで出して見ましたら、それは四つに折ったはがきぐらゐの大きさの緑
  色の紙でした。(「銀河鉄道の夜宮沢賢治全集7)

ゆりは「桃果の日記」と言っていますが、この運命日記の正体は“ゆりの心臓”であり、やはり、これまでどおり「ゆりが桃果の名前で書いた運命日記」なのだと解釈します。

さて、桃果は生きているのか死んでいるのか。眞悧が病院で命の苹果を補充したベッドに横たわっている患者が桃果の肉体だと思います。しかし、桃果の魂は過去世に転生してゆりの魂となっているのだと思います。




ピングドラム、世界の秘密】

はてさて、苹果の一大事です。苹果は危機を脱出できるのでしょうか。

いや、たぶん、脱出できないんじゃないかと思います。拉致される直前に苹果が持っていた雑誌の裏表紙に“時籠ゆりは回るドラム”とありました。ご丁寧にマーカまで引いて。

“時籠ゆりは回るドラム”ならば、“苹果はピング”なのではないでしょうか。ふたつが合わさると“ピングドラム”。それも“回るピングドラム”そういえば、2chに“苹果”の北京語読みが“ピング”であるという解読がありました。


次回は、物語も後半が過ぎて、いよいよ“ピングドラム”が出現する可能性がかなり大です。同時に、陽毬は退院です。“世界の秘密が明かされた時”が陽毬が退院する時だからです。

蛇足ながら、“ピングドラム”とは、牛乳マークのシールがついたリンゴじゃないかと予想しています。

 

つづく >輪るピングドラム 第15話