野ブタ。をプロデュース -第4話-

何人探しから始めます。

校庭に相合傘を書いた人物をC子とする。C子={マスカラ、袖のボタンをとめていない}。答えは単純明快です。C子=坂東です。C子=A子ではありません。A子はマスカラなどつけていません。

ならば、坂東の犯行動機はなんでしょうか。なぜ、坂東は相合傘を書くのか。なぜ、坂東は114に修二への告白者として信子を申し込むのか。なぜ、坂東は殴られるのか。なぜ、坂東のカレシはイケてないのか。

動機も単純明快です。坂東は修二が好きなんです。信子を坂東に置き換えればいいだけ。

信子は2度坂東ができなかったことをあっさりクリアしてみせました。ゴーヨク堂の立ち読み。一人お化け屋敷。坂東は自分ができないことを信子に押し付けているのです。坂東のほんとうの気持ちは相合傘にコズエと書きたかったし、修二に恋心を告白したいのも坂東でした。できない、でも書きたいし告白したい。その心理が、ノブコと書かせたし小谷と書かせたのです。

だけど、坂東が修二を好きってのは公然の事実です。みんな知ってます。坂東が暴れだすと、よってたかって矢面に立たされるのは修二ですから(^^)。坂東はツンデレの典型ですね。そして、坂東のカレシがイケてないのは、イケてる修二が好きという、その逆心理です。

そして、坂東は“殴られて”いるのではありません。「ちがうんだってば」って言ってましたよね。“殴らせて”いるんです。善意100%の人もいないし、悪意100%の人もいません。善意と悪意がないまぜ、それが人です。いじめや暴力という形で出してしまった悪意は、反作用として、その人の善意に責められる。ぎゃくに、善意を行うと反作用としての悪意が積もる。つまり、暴力を振るっている、いじめをしているという、坂東の心理が、心理的バランスを保つために、坂東を殴るような人物をカレシにさせているのです。

だから、じつは彰の行動は勘違いです。女の子のハートはガラスでできている。これも間違った先入観です。彰の行動は直情的と評してもいいでしょう。


第4話のキーワードは“ウソ”と“本音”でした。

修二はまり子に誕生日を教えないしウソも言う。まり子とのことは、高校卒業までの付き合い、深入りしたくないからと言ってました。修二とまり子の関係を支えるものは修二の“ウソ”。でも、そのウソは、まり子を思いやっての“ウソ”でもあります。修二は「やさしいから、ちょっと不安(ウソで信子の告白を受け入れてしまう)」と、まり子が心配する。それは、まり子自身が意識下で修二との関係を、そう感じていることの裏返しです。

いっぽう、修二と信子の関係を支えるものは修二の“本音”。だけど、修二は“本音”も“ウソ”も言う。っていうか、“ウソ”を言っているつもりなんでしょうね。じつは“本音”を言っているんだけど、心の中で“ウソ”だと否定している、とういか、否定したい。これも心理。


まり子のケーキを食べなくちゃいけないと差し出す信子。修二は「キモいっしょ」と言ってしまう。たぶん、これも修二の本音。信子はうなだれて去る。その後、114への申し込みが発覚。

彰は、このうえ、修二に水をかけられたらと案じます、目の当たりにした修二とまり子の会話。信子のハートもガラスでできているのだ。三人の関係が破綻の危機と感じたかもしれない。だから、脅しにかかる。

これも、彰の勘違い、間違った先入観です。じつは、修二が、信子に「キモいっしょ」と言えた時点で、修二は、無意識に、信子の気持ちがこの強い言葉に耐えられる、と信じていたと考えられるのです。

彰は、柳のエピソードを知りません。そして、ネクタイのアップリケの意味も知らない。あのとき、アップリケが繕ったのはネクタイだけではありません。信子の気持ちも繕っていたのです。

サルの手に、坂東のいない世界を願った信子。実は自己否定なんです。あのとき、信子の気持ちは破綻していたのです。それを繕ったのが柳とアップリケ。繕ってもらった信子の気持ちは願いを取り消します。

そのとき、信子と修二の間に生じた感情があったとすれば、それは“愛情”ではなく“信頼”なのだと思います。つまり、たとえ、ふたりの間に強い言葉が交わされたとしても支えるだけの“信頼”があるのだと思います。

だだ、その“信頼”もあくまで無意識下。修二の気持ちは“したいこと”と“しなければいけないこと”の間でアミダくじの迷路をさまよわけです。


ほんとうのところをいうと、第4話は、演出も不満ですが、脚本にも不満たらたらです。114では坂東にチェンジする必要なぞなく、修二が信子に水をかけてしまえばよかったのです。

じつは、信子の気持ちはそれに耐えられたのです。水をかけられた後、一同沈黙→信子のVサイン→(めげてない)→一同喝采、という話にすると、ラストの修二の手帳のアミダくじのエピソードはもっともっと生きたと思うのです。

Vサインは修二から信頼されたことへの勝利のサインです。だてに“信子”という役名がつけられているわけではありません。信頼すること、信頼されることが信子にとっての勝利なのです。

もうひとつ瑕疵があります。114の壇上で問われ、なんの伏線も積み上げもなく唐突に「変われるんです」といいました。第4話のモチーフは“ウソ”と“本音”です。あそこは、「ゥ、ウソは嫌いです」と言わせてザバッと水をかけてあげるのがストーリーとして自然だったと思います。