烏瓜の燈火(あがし)

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夏、あんなにも咲きほこっていた烏瓜の花なのに、色づいた烏瓜の実のほうは、いっこうに、探しあてられないでいました。ただし、直径1センチメートルほどの小さな青い実が連なっているのが藪の中にあるのは見かけていました。

今朝、まだうすく暗さがのこる頃、駅に行く途中で見かけたのがこの烏瓜の実です。


  「そうだ。おら去年烏瓜の燈火(あがし)拵(こさ)へた。そして縁側へ吊るし
  ておいたら風吹いて落ちた。」と耕一がいいました。
  すると又三郎はふきだしてしまいひました。
  「僕お前の烏瓜の燈篭(とうろう)をみたよ。あいつは綺麗だったねい、だから
  僕がいきなり衝(つ)き当たって落としてやったんだ。」
  (宮沢賢治「風野又三郎」宮沢賢治全集5 ちくま文庫


烏瓜の燈火(あがし)または烏瓜の燈篭(とうろう)は「風の又三郎」の原型「風野又三郎」にだけ現れます。“燈”は「銀河鉄道の夜」では燈台守の“燈”で、それは、苹果の果皮の色であり、かほるのかがやく頬の色であり、天上に生まれるための“清浄な命”を表す象徴でした。

そして、宮崎駿崖の上のポニョ」で、ポニョは「銀河鉄道の夜」の燈台守をなぞった存在でした。しかし、ポニョが象徴する色は、熟した苹果の赤というよりも、朱色にちかいオレンジがかった赤でした。今朝の烏瓜の実の写真をあらためてながめてみて、ふと思い浮かんだのがポニョの赤でした。つまり、ポニョの赤とは烏瓜の実の朱色、それも、熟しはじめた“若い朱色”だったのではないかな、と思っています。